column 581. 暮らす

春といえば「おぼろ月」

2019.04.25

春といえば「おぼろ月」

「おぼろづき たいがをのぼる ぎょしう(御船)かな」

江戸時代中期に活躍した俳人、与謝蕪村が読んだ一句。
「おぼろ月」が大河を渡る船のように見えると言ったところでしょうか。

「おぼろ月」

「おぼろ月」とは、この時期によく見られる「ほのかにかすんだ月」の事。
春の季語でもあります。
あのようにかすんで見える理由は、春特有の気候が関係していると言われています。

軽く説明すると、春は昼と夜の気温差が激しいので、昼にたまった暖かい空気は夜になると急激に冷やされ「水蒸気」となります。
この「水蒸気」が月の周りを囲むように輪っかを作ります。
そして「水蒸気」がまた急速に冷えることで今度は「水滴」となり、
その「水滴」が月明かりに照らされると文字通り「おぼろげ」に見えるという訳です。
水滴がついたガラスを想像していただくとイメージしやすいかもしれません。
簡単に言えば「水蒸気が月を包み込んで出来る自然現象」です。
それにしても「おぼろ月」とは、なんともロマンチックなネーミングですよね。

「おぼろ(朧)」と「かすみ(霞)」は同じ

ちなみに空気中に浮いている「小さな水滴」や「ちり」などで、
遠くのものがぼんやりとしてはっきり見えなくなる現象を「かすみ(霞)」と言うのですが、
実は「おぼろ(朧)」と「かすみ(霞)」は全く同じ現象だそうです。
確かに「かすみがって見える月」と「おぼろげに見える月」イメージしてみても同じですよね。
日中にこの現象が起これば「かすみ(霞)」、夜に起これば「おぼろ(朧)」と呼びます。
時間帯で呼び名がかわるのはおもしろいですよね。

形は関係ありません

「おぼろ月」と聞くと、うっすらとした霧の奥に見える「満月」を想像してしまいますが、月の形はまったく関係ありません。
「上弦の月」であろうが「下弦の月」であろうが「三日月」であろうが、
うっすらと霧がかって見える月はすべて「おぼろ月」です。
ただし「太陽」、「月」、「地球」が一直線上に並ぶことによって月がみえなくなる「新月」など
「月」が目視できない場合は「おぼろ月」とは言いません。
ハッキリとその姿をあらわしている月もキレイですが、
うっすらとしたカーテンの奥に見えるふんわりとした月もまた美しいですよね。

春のこの時期、暮れと共に姿を現すキレイな「おぼろ月」。
今宵は、この美しい「大河を渡る船」に願いを込めてみてはいかがでしょうか。
皆様の願いを船に乗せて運んでくれるかもしれませんよ。

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