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団体信用生命保険の特約はつけるべき?特約のメリット・デメリット

2021.02.01

団体信用生命保険の特約はつけるべき?特約のメリット・デメリット

あまり知られていないことですが、住宅ローンを組んでマイホームを購入する場合、金融機関から「団体信用生命保険」という生命保険への加入を求められます。
多くの場合、団信への加入は住宅ローン審査における必須条件の一つなので、団信に入らないという選択肢はありません。

ただ、いくら審査に必要だからといっても、保険料を支払う以上は補償の内容や範囲に納得したうえでお金を払いたいと考えるのは当然の話です。
そこで今回は、団体信用生命保険の基礎知識と、団体信用生命保険に特約をつけるべきかどうかについて解説します。

住宅ローンにおける団体信用生命保険の役割とは

●住宅ローンを組むためには団信の加入が必須

団体信用生命保険とは、「契約者が死亡または重度・高度の障害を負った場合、住宅ローン残債と同額の保険金が下りる」という保障を定めた特殊な生命保険のことです。
かけ金や契約年数に応じて保険金額が変動する一般的な生命保険とは違って、団信の場合は、いつ契約者がローンを返済できなくなっても、「ローン残債」と同額の保険金を出してもらえます。

住宅ローンの利用者が団体信用生命保険に加入して保険料を払っていれば、万が一、契約者が亡くなったとしても、家族が路頭に迷うこともなく、金融機関側も貸したお金を全額回収できるのです。

住宅ローンでは、安い物件を購入する場合でも融資額が数百万円を越えてきます。
通常のローンよりも融資額が大きく、なおかつ金利が低い以上、金融機関側にも何らかの保障がないと、お金を貸してくれる業者が出てきません。
だからこそ、住宅ローンを組むためには団体信用生命保険への加入が必要とされているのです。

●団信に加入するメリット

とはいえ、わざわざ保険料を払ってまで、団体信用生命保険へ入る意味があるのかと悩む人もいるでしょう。
そこで、ここからは団体信用生命保険に加入するメリットを簡単にお伝えします。
団体信用生命保険に加入するメリットは、以下の通りです。

  • 住宅ローンを利用できる
  • 契約者が死亡または重度の障害を負って返済できなくなっても、家族にローン完済済みの家を残せる
  • 特約をつければ既存の生命保険もある程度カバーできる

住宅ローンは、個人で1,000万円以上のお金を借りられる数少ない手段の一つ。
ローンを使わない場合、住宅購入資金を全額キャッシュで用意することになってしまいます。
団体信用生命保険に加入することで、住宅ローンを利用できるようになるのは大きなメリットです。

また、団体信用生命保険に加入していると、契約者に万が一のことがあったとしても、ローン残債と同額の保険金を出してもらえます。
一家の大黒柱が働けなくなっても、残される家族はローンを完済したうえで自宅に住み続けられるわけです。
団信に入っていなかった場合、残された家族が働いてローンを返済することになるので、家族を安心させるためにも団体信用生命保険には加入しておきましょう。

そして、団体信用生命保険も生命保険の一種なので、元々入っていた生命保険の補償範囲を一部カバーできるメリットがあります。
もちろん、一般的な生命保険や医療保険のほうが、特約等も充実しているので保障の範囲は広いです。
しかし、団信に入れば最低限の生命保険を確保できるので、必要に応じて今加入している保険の内容を見直せます。

●団信に加入するデメリット

団体信用生命保険に加入するデメリットは、月々の住宅ローン返済額が若干高くなってしまうことです。
多くの場合、住宅ローンと団体信用生命保険はセットで加入する形になっているので、ローンの返済金額に保険料が上乗せされてしまいます。
月々のローン返済と一緒に請求がくるタイプとは別に、別途保険料の請求が来るタイプもあるので、団体信用生命保険に加入するときは支払いのタイプも確認しておきましょう。
なお、金利に上乗せして保険料を支払うタイプの団体信用生命保険は、原則としてローンを完済するまで解約できません。

団体信用生命保険の三大疾病特約とは

●がん・急性心筋梗塞・脳卒中の医療費が出る特約のこと

団体信用生命保険には、民間の医療保険と同様にいくつかの特約が用意されています。
その中で最も一般的なのが、がん・急性心筋梗塞・脳卒中の診断が出たときに保障を受けられる「三大疾病特約」です。

上記の三大疾病には、

  • 日本人の死因の上位を占めている
  • 発症した場合入院期間が長期化しやすい
  • 医療費が高額

という特徴があり、かかるリスクと発症したときの負担が大きいため、多くの保険で特約が用意されています。

●三大疾病特約の保障内容と範囲

加入する団信によって細かい部分は変わってきますが、団体信用生命保険に三大疾病特約をつけた場合の保障内容は、以下の通りです。

上記の三大疾病には、

  • 三大疾病の診断が下りたときに保険金が出る
  • 三大疾病によって入院したときの一時金
  • 三大疾病による入院・通院中の日額手当

三大疾病の診断が下りた場合に、住宅ローンの支払いを待ってもらえる場合もあります。
団信によっては、診断が確認された時点でローンを完済できるものもあるため、住宅ローンを選ぶときは特約の保障内容もチェックしましょう。

年齢とともに高まる三大疾病のリスク

●どれくらいの人が三大疾病にかかるのか

基本的に、がん・急性心筋梗塞・脳卒中は、年齢が高くなればなるほど病気になるリスクが上がっていきます。
特に注意したいのが、がんの罹患率です。
国立がん研究センターの調査によると、一生涯のうち、男性の65.5%、女性の50.2%ががんになる確率を持っているというデータが出ています。(※1)
若い人だとがんになる可能性は低いですが、実際にはいつ自分ががんになるかはわからないうえに、長期的なスパンで見れば2人に1人ががんになってしまうので、長い目で見るとがん特約は必須だと考えておいた方が良いでしょう。

●三大疾病は死亡リスクが高い

団体信用生命保険に三大疾病特約をつけられる理由には、「三大疾病は死亡リスクが高い」というものもあります。
厚生労働省が調べた令和元年における死因の年間ランキングの内、三大疾病の順位は以下の通りです。(※2)

  • 第1位:がん: 27.3%
  • 第2位:心疾患:15.0%
  • 第4位:脳血管疾患:8.8%

合計すると、全体の51.1%が三大疾病で亡くなっています。
もちろん、死亡者数を考えれば亡くなる方は高齢者が多いので、年を取れば取るほど罹患リスクが高くなる三大疾病の数が増えるのは当然です。
しかし、がん・心疾患・脳血管疾患が持つ死亡リスクの高さは、若いからといって無視できるものではありません。
若年性のがんは、進行が早いので短期間で亡くなってしまうリスクがありますし、急性心筋梗塞や脳卒中は、ある日突然訪れる病気だからです。

●三大疾病の医療費負担

団体信用生命保険に入る際、三大疾病特約をつけていると万が一の保障が充実します。
しかし、実際に三大疾病になったとき、治療費にいくらかかるのかが分からないと、上乗せされる保険料を支払う価値があるかを判断できません。

そこで、簡単に三代疾病の医療費負担を見てみましょう。(※3)
まず、がん(胃がん)の医療費については、1人あたりの入院費用が約95万円です。
実際には健康保険の補助があるため、大雑把に3割負担と考えれば、約29万円かかる計算になります。
当然、がんの種類によって必要な医療費は変わってきますが、いくつかのがんを平均しても医療費の相場は25万円から30万円程度。

次に、急性心筋梗塞にかかった場合、1人あたりの入院費用として約178万円かかります。
3割負担だと考えても、53万円程度の医療費が必要になるわけです。

そして、脳卒中の中でも血管がつまってしまう、「脳梗塞」の1人あたり入院費用は約160万円、血管が破れて脳内で血が出てしまう「脳出血」の1日あたり入院費用は、約225万円となっています。
脳卒中は非常に重症化のリスクが高く、対処が遅れれば遅れるほど死亡リスクやリハビリ等の必要性が高まることもあって、医療費も高額です。

とはいえ、健康保険の「高額療養費」という制度を使えば、月々の医療費は8~9万円に抑えられます。
ただ、高額療養費制度だと、個室への移動や先進医療の費用までカバーしてもらえませんし、住宅ローンがある状態で毎月8万円出ていくのは非常に大きな負担です。
しかし、団体信用生命保険に三大疾病特約をつけていれば、上記の費用を保険金でカバーできます。

(※1)国立がん研究センター:最新がん統計
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
(※2)厚生労働省:令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai19/dl/gaikyouR1.pdf
(※3)公益社団法人 全日本病院協会:診療アウトカム評価事業:2019年医療費(重症度別)
https://www.ajha.or.jp/hms/qualityhealthcare/pdf/2019/all/2019all_outcome_09a.pdf

特約をつけるメリット

●三大疾病にかかったときに保険金が下りる

三大疾病特約をつける最大のメリットは、がん・急性心筋梗塞・脳卒中になったときに保険金が下りることです。
特約なしの標準的な団体信用生命保険では、死亡または高度障害が残る状態になったときにのみ保障をしてもらえます。
「自分は健康だ」と思っていても、10年後・20年後も契約者が健康であり続ける保証はどこにもありません。
住宅ローンは30年前後かけて少しずつ返していくロングスパンの借り入れなので、将来の自分や家族のためにも最低限の保障を用意しておきましょう。

●掛け金の割にもらえる保険金の額が大きい

一般的な医療保険や生命保険は、加入者の年齢に応じて保険料が高くなります。
しかし、団体信用生命保険の三大疾病特約は、主に住宅ローンの借り入れ額で保険料が決まるので、年を重ねても支払う金額が高くなりません。
若い間は損をした気分になるかもしれませんが、年齢が上がるとその分、保険料がお得になるので、予算に余裕があるなら特約をつけることをおすすめします。

●自分が働けなくなっても家族に負担がかからない

団体信用生命保険に三大疾病特約をつけておけば、自分に何かあったとしても家族に負担がかかりません。
がん・急性心筋梗塞・脳卒中は、どれも平均して20日程度の入院が必要になる重い病気です。
数日入院した程度で職場復帰できるようなものではないので、特約に入っていない場合、病気の治療によって収入が減った状態で、ローンの返済と治療費の支払いがのしかかってきます。
しかし、特約があれば、医療費に関して大幅な補助を受けられるので、家計へのダメージを最小限に抑えられるのです。

特約をつけないデメリット

団体信用生命保険に加入して住宅ローンを組む際に、三大疾病特約をつけないデメリットは、先程ご紹介した特約をつけるメリットの真逆です。
つまり、
・三大疾病にかかっても保険金が出ないのでローン返済・医療費・生活費が苦しくなる
・三大疾病保障を受けるためには別途医療保険・生命保険への加入が必要
というデメリットに対処する必要があります。

緊急時に精神的な余裕を保つコツは、金銭面の不安を減らすことなので、特約がない場合はその他の医療保険を充実させておきましょう。

三大疾病特約にかかる保険料

実際の請求額は団体信用生命保険によって変わってきますが、三大疾病特約をつけると、住宅ローンの金利が年間で0.2~0.4%ほど高くなるとされています。
具体的な金額でいうと、

  • 住宅ローン借り入れ額1,000万円:+2万円前後
  • 住宅ローン借り入れ額2,000万円:+4万円前後
  • 住宅ローン借り入れ額3,000万円:+6万円前後

上乗せされると考えておけば良いでしょう。

三大疾病特約をつけるべきかの判断基準

団体信用生命保険に三大疾病特約をつけるべきか迷ったら、

  • 団体信用生命保険料+特約の費用
  • 医療保険+三大疾病特約の費用

を比べて、総額の安い方を選ぶのがおすすめです。
ただし、団体信用生命保険のほかに医療保険へ加入する場合は、保障の範囲や内容が被らないように気をつける必要があります。
なお、一般的な医療保険は加齢と共に保険料が高くなっていくので、できれば数十年間の総支出を比較しましょう。

まとめ

団体信用生命保険は、契約者の死亡または重度の障害を負ったときにローン残債を肩代わりしてくれる保険です。
ただし、特約をつけていない場合、死亡または高度障害以外の病気は一切カバーしてもらえません。
三大疾病のがん・急性心筋梗塞・脳卒中は、日本人の死因の上位を占めるリスクの高い病気です。
がんに至っては2人に1人がかかるとされているので、住宅ローンという大きな負債を背負うなら、家族のためにも特約に加入しましょう。

 

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