空き家の活用事例

空き家対策特別措置法の施行により、これまでのように空き家の放置しておくと「特定空き家」と判断され、最悪の場合撤去命令が下されることも考えられます。2013年12月には仙台市でも空き家に関する条例が作られ、市の調査でも400戸以上の特定空き家に該当する建物が確認されています。自分の所有する空き家が、特定空き家と判断されて撤去命令を受けないためも、上手く活用する方法を考えるべきでしょう。

しかし、そう簡単には空き家の活用について具体的なアイデアが思い浮かばないと思います。そこで今回は、空き家を活用するための基礎知識、空き家の活用事例について見ていきたいと思います。

空き家の活用方法

空き家の所有者は相続や贈与で不動産を取得するケースが大半でしょう。首都圏で就職して家を購入して生活していたが、地方の実家を相続したがそのまま空き家として所有したままというケースの場合、自分が家を所有していることさえ忘れている方もいます。

空き家を活用する場合、一般的には「一戸建て貸家」として貸し出す方法が主流です。しかし、実際は一戸建て賃貸物件として不動産仲介情報をインターネットに出しても空き家の場合はそう簡単には入居は決まりません。その要因は大きく2つあると言えます。

<空き家の賃貸が難しい2つの要因>

1.賃料が割高である

一戸建ての空き家を賃貸に出す場合、借り主からすると割高の賃料となってしまいがちです。これは、空き家の所有者が儲け主義というわけではなく、2つの理由があります。まず、一戸建ての物件は固定資産税の負担が大きいですので、その支払いをするために家賃が高めになってしまいます。

次に、一般的な賃貸借契約では貸し主は修繕義務や借り主が物件を維持するために支出した費用を負担する義務があります。空き家を賃貸に出す場合、建物が古いケースばかりが多いので突発的な修繕費用を積み立てる必要があります。そうなると、家賃設定がどうしても高めになってしまいます。

2.設備や間取りなどが入居者の好みにマッチしていない

空き家となっている建物は全体的に築20~40年程の古い物件が多いです。
そのため、入居者に気に入られづらいケースが目立ちます。

<古い空き家が好まれない要素とは?>

  • キッチンの高さが低く使い勝手が悪い
  • お風呂が狭く浴槽も足を伸ばせない
  • 開放感のない間取り

といった入居者が好まない要素があります。ローンを組んでかけてこれらの問題を解決するようなリフォームをすれば借りる人はいるでしょうが、返済には時間がかかりますのでおすすめできません。このような話を聞くと、「空き家は活用できないのではないか?」と考えるでしょうが、工夫次第で空き家を活用して賃貸に出すことは可能です。

そのためには、従来の賃貸借契約におけるセオリーを空き家活用のために変更させる必要があります。

<空き家を活用するための基本原則>

  1. 貸し主の金銭的負担を減らすような契約内容とする。
  2. 借り主には物件を現状で引き渡し、自由にリフォーム等できるようにする。

この2つの原則を中心に賃貸借契約をすると、空き家の活用がやりやすくなります。
次に、この原則を用いた空き家活用の具体例を3つ見ていきます。

活用事例1 借り主が修繕やリフォーム代を負担する、新しいタイプの契約

今回の事例は、空き家を貸したいけどリフォーム代や修繕費を出したくないという貸し主Oさんの事例です。
家賃を安くするかわりにリフォームや修繕費用は借り主持ちで契約するプランにしました。

借り主として、建物のメンテナンスなどは自分でするので家賃を安くしてほしいという考えの借り主Mさんが見つかり、次のような契約を結びました。

<空き家を活用するための賃貸借契約内容>

  • 賃貸借契約では、通常の賃貸借契約内容を変更して建物は現状のままで貸し出し、リフォームや修繕費用は借り主持ち
  • 借り主は建物の改装や備え付けの設備を処分するなど自費で建物を自由に利用でき、退去の際も原状回復をせずにそのままでよいと合意
  • 賃貸借契約期間は10年間とする

このような契約により、貸し主は突発的な出費がなく、安定した家賃収入を得ることができますし、借り主は自分の住みたいようにカスタマイズした家に長い期間住めるという双方が納得いく形で空き家を活用できました。

空き家は築浅物件と異なり建物のメンテナンス費用が必要なケースが多いですので、DIYの得意な借り主に安い家賃で借りてもらうという活用方法はこれから増えるでしょう。

活用事例2 シェアハウスとして若者たちに貸す

最近流行のシェアハウスですが、空き家活用には有効な方法の一つです。シェアハウスとは、家族や夫婦といった集まりではなく知人同士や面識のない人たちが集まって共同で生活する場所を意味します。同世代の若者などに人気がありますが、アパートやマンションをシェアハウスにした場合、夜中に騒ぐなど近所に迷惑をかけてトラブルとなることも多いようです。しかし、一戸建てですとそのような心配も少ないです。

また、設備面や修繕についても借り主たちに自主的にやってもらうような契約も成立しやすいため、貸し主の負担は軽くなります。

今回の事例は、築年数は古いが部屋数が多い空き家を所有されているSさんの事例です。Sさんのご要望は、10年後に空き家を取り壊して建て替えるのでお金をかけずに空き家を活用したいとのことでした。Sさんの家は仙台市内の大学があるエリアでしたので、建物は現状のままで一人18,000円の家賃でシェアハウスとして貸し出すことになりました。

その結果、友人同士である地元の大学生8人が借りることになり、月々の家賃収入が144,000円になりました。もちろん、リフォーム代や修繕費を負担する必要はないため、固定資産税と定期的な庭の掃除代だけを負担すればよく不動産所得が手元に残るようになりました。

今後、家賃収入の変動はあるでしょうがSさんは「10年後の建て替えの頭金が貯まります。」と喜ばれています。

活用事例3 住居としては借り主が見つからないので駐車場と家庭菜園として貸す

今回の事例は築70年の空き家を相続したYさんから、「急いで売却した方が良いかもわからない。何か良い活用法はないか?」とのことでした。Yさんの物件のあるエリアは、仙台市内でもこれから地価が少しずつ上がると予想されるエリアでした。放置して「特定空き家」と判断され早期売却するにはもったいなかったので、固定資産税の支払分と建物管理分の収益が上がるような活用をしました。

<Yさんの空き家の特徴>

  • Yさんの空き家は老朽化がひどく借り主が見つからない
  • 庭が広く、家庭菜園跡がある
  • 駐車場が広い

という物件でしたので、貸家という考え方をやめて近所の人に駐車場と家庭菜園として貸し出すという方法にしました。

結果的に、月額1台5,000円の駐車場として3台、家庭菜園として8,000円の合計23,000円で賃料を発生させる事に成功して、当初の予定通り固定資産税の支払分と建物管理費用を捻出できました。Yさんは、「将来土地が値上りするまで気長に待つ。」という方向で考えられています。

今回のまとめ

  • 空き家の活用は、お金がかからない賃貸借契約内容にする
  • 家を貸せないからといって、賃料を手に入れることができないとあきらめない

空き家を活用する場合、不動産投資のような収益を目指すことは難しいです。しかし、賃貸借契約内容や所有する空き家の土地を有効活用する工夫はあるかもしれません。今回のような、安定した賃料収入や最低でも固定資産税の支払分を浮かせるような活用法を試してみましょう。