
海外不動産売却時の税金は?課税額の求め方や注意点を解説
2025.01.31
海外不動産を売却すると、現地の税金と国内の譲渡所得税の両方が課税されます。
ただし、国によって課税のルールが異なるため、海外不動産を売る時は、現地の税法について詳しく調べたり、現地の税制に詳しい専門家の力を借りたりすることが重要です。
今回は、海外不動産の売却時にかかる税金の種類から、課税額の求め方、売却に関する注意点について解説します。
海外の不動産を売却したときにかかる税金
●現地の所得税等
海外の不動産を売却した場合、現地の税法に基づいて所得税や付加価値税等を課税されるケースが多いです。
たとえば、アメリカでは、不動産の売却価格から一定額を源泉徴収され、さらに売却時の利益に対しても譲渡所得税が課税されます。
タイなら、不動産の所有期間に応じて税率が高くなる源泉税や印紙税、移転登記税が必要ですし、フィリピンだと売却価格または市場価格の6%に相当するキャピタルゲイン税、そして印紙税の納付が必要です。
また、経済発展の著しい国では、物件の購入時と売却時で法律が変わっていることも珍しくありません。
海外の不動産を売るときは、常に最新の税法を確認し、現地のルールに則って納税する必要があります。
●日本の譲渡所得税と住民税
不動産そのものが海外にあったとしても、不動産売却益に対する税金を現地で納めていたとしても、日本に居住している場合、日本でも譲渡所得税・住民税の納税が必要です。
なぜなら、日本は全世界所得課税といって、日本に住んでいれば、海外で得た所得も課税の対象にするという方針を採っているから。
また、日本の税法では、売却する不動産を売却するまでの所有期間によって、2種類の税率どちらかが適用されるというルールになっています。
所有期間が5年以下の場合は、短期譲渡所得という扱いになり、譲渡所得税30%と住民税9%の納税が、所有期間5年超の場合は長期譲渡所得という扱いになり、譲渡所得税15%と住民税5%の納付が必要です。
譲渡所得税の求め方
●取得費と譲渡費用から譲渡所得を求める
日本国内で納める税金、譲渡所得税と住民税の納税額を計算する時は、最初に「譲渡所得」を求めます。
譲渡所得は、不動産の売却価格から、取得費と譲渡費用を差し引いた売却利益のことです。
取得費は、売却する不動産を購入したときに負担した経費で、購入時の仲介手数料や経年劣化を考慮した不動産価格などを含みます。
一方の譲渡費用は、不動産売却時にかかった経費です。
売却時の仲介手数料や、住宅ローンの関係上設定されていた抵当権を解除するための費用などが譲渡所得となります。
もし、取得費がわからない場合は、「不動産売却価格の5%」を取得費とみなして構いません。
上記の内容をまとめると、譲渡所得の求め方は以下の通りです。
・不動産の売却価格-(取得費+譲渡費用)=譲渡所得
●所有期間に応じた税率を譲渡所得にかける
譲渡所得税の税率は、短期譲渡所得と長期譲渡所得の2種類に分かれます。
不動産を売った年の1月1日時点で、不動産の所有期間が5年以下であれば短期譲渡所得、5年超なら長期譲渡所得です。
また、海外不動産の売却で得た利益、譲渡所得に対して2.1%の復興特別所得税も追加されるため、最終的な税率は以下のようになります。
・短期譲渡所得:譲渡所得税30%+(30%×復興特別所得税2.1%)+住民税9%=39.63%
・長期譲渡所得:譲渡所得税15%+(15%×復興特別所得税2.1%)+住民税5%=20.315%
海外不動産の売却時に国内で納める税額は、以下の式で計算可能です。
・不動産の売却価格-(取得費+譲渡費用)×39.63%または20.315%=納税額
外国税額控除で二重課税を回避しよう
海外不動産の売却時に現地で税金を納めている場合、支払った額の一部を日本の譲渡所得税や住民税から差し引けます。
外国税額控除と呼ばれるこの制度を利用すれば、不動産売却の利益から、海外と日本で二重に税を取られるという事態を防げるのです。
ただし、控除には上限額がありますし、全ての海外税が控除の対象になるとは限りません。
現地の税金を控除に使えるかどうか、事前の確認が必須です。
海外の不動産を売る時の注意点
海外の不動産を売却する場合、原則として海外と日本の両方で確定申告をする必要があります。
国によって、不動産の売却後の申告期間が違いますし、外国税額控除を受けるためには、現地で申告・納税をしたことを証明できる書類の提出も必須です。
必要書類が不足していると、スムーズに申告できず、税の負担も増えてしまうため、海外不動産の売却時は早めに現地で申告をすませ、必要書類の準備を進めましょう。
まとめ
海外不動産売却時の税金は、現地と日本両方で納める必要がある上に、双方の税法を理解して申告・納税をする必要があります。
なお、外国税額控除を利用し、海外と日本で利益に二重課税されないようにするためには、現地で申告したことを証明できる書類が必須です。
海外で先に申告・納税する必要があるため、海外不動産を売るときは、売却手続きを始める前に現地の税法に詳しい税理士などを探し、スムーズに納税できる態勢を整えましょう。