column 799.

圧縮記帳って何?個人資産の売却時も使えるの?制度を解説

2025.01.30

圧縮記帳って何?個人資産の売却時も使えるの?制度を解説

不動産を売却して利益が出た場合、利益に応じた納税が必要です。

ただし、例えば所有している物件を売って新しい物件に買い替えるとき、売却代金の一部を税金として納めると、使える予算が減ってしまいます。

こうした状況を解決する手段の一つが、圧縮記帳という特殊な会計処理です。
今回は、圧縮記帳とは何なのか、どういう時に利用できて、個人が使う場合どういったメリットやデメリットがあるのかなどを解説します。

不動産売却時の税金を後回しにできる!圧縮記帳とは

圧縮記帳とは、不動産などの固定資産を売って得た利益を、帳簿上圧縮し、本来なら翌年に納めるべき税の支払いを、後回しにする会計処理のことです。
通常、不動産を売って利益を得ると、利益に応じた税金が発生します。

ただ、たとえば不動産や工場などを売って買い換える場合、売却時の税金と新しい資産の購入費用を同時期に支払うと、現金が足りなくなってしまうケースも少なくありません。
そこで、納税を保留して手元にお金を残し、一時的な資金難を回避するのが、圧縮記帳という手続きなのです。

圧縮記帳の利用条件

●圧縮記帳を利用できる6種類のケース

圧縮記帳は、以下6種類のケースで、固定資産を手に入れた時に利用できます。

・国庫補助金で新しい固定資産を買った
・工事負担金で新しい固定資産を買った
・火災などの災害に対する保険金で新しい固定資産を買った
・交換によって新しい固定資産を手に入れた
・収用を受け入れる代わりに別の固定資産を入手した
・特定の資産を買い換えた

順番に見ていきましょう。

●国庫補助金・工事負担金・保険金で固定資産を買った場合

国や公共事業の補助金、火災等の被害を受けた後に出る保険金などで新しい固定資産に買い換えた場合、圧縮記帳を利用可能です。
基本的に、これら3種類のケースは、個人ではなく法人をターゲットにしたものなので、個人が不動産を売却する際に気にする必要はありません。
法人のインフラ整備や、設備投資をしやすくするための制度です。

●交換や収用で固定資産を手に入れた場合

交換は、文字通り土地と土地、建物と建物といった固定資産同士を交換することを指します。
相手に渡した資産より、相手からもらった資産の方が高額だと、差し引きで得していることになるため、納税が必要です。

しかし、交換の内容が一定の条件を満たしている場合は、圧縮記帳を利用できます。
一方、収容は、公共事業などで立ち退きを求められた際に受け取る補償で、新しい資産を手に入れる状況のことです。
交換も収容も、個人では利用の難しい、法人向けの制度となっています。

●特定の資産を買い換えた

不動産や船舶など、特定の資産を一定の条件の元に買い換えた場合、買い換え時に得た売却益を圧縮可能です。
ポイントは、土地を売った時は土地を購入し、船を売ったら船を買い換えるなど、同じ種類の資産を買い換えること。

また、圧縮記帳の利用が認められるのは、人口の多い市街地から郊外への買い換えなど、一部の状況に限られます。

個人が不動産を売る時も圧縮記帳は使えるの?

個人が不動産を売るときも、圧縮記帳は利用可能です。
ただし、圧縮記帳の個人利用は、個人事業主としてビジネスをしており、仕事で使う不動産を買い換えたり、不動産投資家が古い物件を新しい物件に買い換えたりするケースに限られます。
なぜなら、そもそも圧縮記帳が法人向けの制度だからです。

ただし、マイホームの買い換えに関しては、圧縮記帳の個人向け制度である「特定のマイホームを買い換えたときの特例」が存在します。
圧縮記帳と同様、「不動産売却時の税金を、将来買い換えた家を売るときまで保留できる」という制度なので、状況に応じて使い分けましょう。

圧縮記帳のメリット・デメリット

●メリット

圧縮記帳のメリットは、キャッシュフローを改善できることです。
個人事業主や中小企業の場合、思い切った設備の更新をすると、帳簿上資産は持っているが、現金がないため、その他の支払いができないといった状況になりがちです。
しかし、圧縮記帳を上手く利用すれば、固定資産を売ったお金を手元に残しておけるため、資金繰りが悪化しづらく、事業の拡大にも手を出しやすくなります。

●デメリット

圧縮記帳のデメリットは、いずれ売却時の税金を納める必要があるということです。
固定資産を売った時の税金は、「買い換えた固定資産を売却する時」に納税するので、計画的に資金を用意しておかないと、現金が足りなくなってしまいます。

また、圧縮記帳は、非常に手続きが複雑です。
利用できるケースも限られるため、使いたいときに使えない場合もあります。

まとめ

圧縮記帳は、不動産売却時の税負担を軽減し、キャッシュフローを改善できる特殊な会計処理です。

ただ、基本的に法人向けの制度なので、個人で利用できるケースはそう多くありません。
マイホームの買い換えをする場合は、圧縮記帳よりも、「特定のマイホームの買い換え特例」の利用がおすすめです。

不動産投資をしている方、個人事業主として設備投資を考えている方は、税理士など門家に相談して、圧縮記帳の使い道を探りましょう。

一覧に戻る

売る

スタッフ紹介

サポート 相続 任意売却 住み替え