
海外生活中に相続した不動産は売却できる?売却方法や注意点を解説
2024.05.15海外で暮らしている方が日本国内の不動産を相続した場合、物件の管理が大変なので、基本的には売却を検討することになります。
ただし、不動産の相続においても、売却においても、権利者が日本にいないということは、手続きを進める上で無視できない足かせです。
そこで今回は、海外生活中に相続した不動産を、現地にいながら売却する方法と注意点について解説します。
海外生活中に相続した国内の不動産を売る方法
●日本にいるほかの相続人に売ってもらう
自分以外の相続人が日本にいる場合に使えるのが、不動産をほかの相続人の名義にしてもらい、売却代金を公平に分割するというやり方です。
相続不動産を売却する時は、相続時と売却時の計2回、不動産の名義を変更する必要があります。
日本国内にいる相続人に手伝ってもらえば、相続した不動産の名義変更や必要書類の取得、売買契約の同席等を任せられるため、スムーズな売却が可能です。
●不動産業者に仲介での売却をお願いする
自分以外に相続人がいない場合、またはほかの相続人を信頼できない場合、自分で日本の不動産業者と契約し、買い主を探してもらうという方法もあります。
ただし、不動産業者は、あくまでも取引の仲介をしてくれるだけ、つまりサポート役です。
・売買契約の締結
・売却代金の決済
など、「売り主の同席が必要な場面」に関しては、一時帰国する必要があります。
日本との時差が大きい国だと、不動産業者とのやり取りも時間がかかりますし、交通費もかさむため、他の方法を選んだ方が良いでしょう。
●代理人を立てて売却手続きを一任する
信頼できる親族や友人・知人はいるが、相続人は自分しかいない場合、国内の知り合いや弁護士、司法書士などを代理人に立てることで、不動産を売却可能です。
委ねる権限の範囲にもよりますが、法的に有効な委任状を作ってしまえば、「売り主の同席が必要な場面」も、代理人に任せられます。
ただし、代理人の持つ権限は非常に大きいです。
場合によっては、お金や不動産を持ち逃げされたり、金額をごまかされたりする可能性もあるため、委任する相手は慎重に選び、委任内容や期間を細かく書面化してトラブルを防ぎましょう。
海外滞在中に日本の相続不動産を売る流れ
●相続と相続登記をすませる
不動産を売却する前に、財産を相続する必要があります。
財産の分割については、遺言があれば遺言に従い、遺言がなければ相続人全員の話し合いで決めるのが原則です。
そもそも遺産を相続するかどうか、遺産を相続人でどのように分割するのかを決めたら、不動産の所有権を自分または売却を任せるほかの相続人に移します。
なお、海外居住者が不動産を自身の名義にする場合、住民票や印鑑証明書の代わりとなる署名証明書・在留証明書の提出が必要です。
最寄りの日本領事館等で取得できますが、手続きが複雑なので、早目に準備しましょう。
●仲介業者や代理人を見つけて売却開始
不動産を相続し、相続登記を終えたら、不動産業者や代理人を決め、売却活動を始めます。
一般的な不動産の売却期間は、仲介業者を決めてから3~6ヵ月です。
不動産の所有者が海外に住んでいる場合、書類のやり取りや質問への返答にも時間がかかるため、あらかじめやり取りの方法や、所有者が海外に住んでいることなども共有した上で不動産を売り込みましょう。
●買い主が見つかったら不動産の引き渡しと代金決済
条件の合う買い主が見つかったら、売買契約を結びます。
買い主側の住宅ローン審査等があるため、売買契約の締結日から物件の引き渡し日まで、1ヵ月ほど空くのが一般的です。
売買契約の締結や物件の引き渡しは、原則対面なので、代理人を立てない場合は帰国日を調整しましょう。
無事に物件の引き渡しと代金の決済が終わったら、不動産売却は完了です。
代金を海外口座で受け取る場合、入金を当日中に確認できないケースもあります。
支払い報告を受けた後も、必ず着金を確認しましょう。
海外にいる方が相続不動産を売るときの注意点
海外にいる方が日本の不動産を売った時、
・売却相手が法人
・売却価格が1億円を超えている
・買い主の購入目的が投資用・賃貸用などマイホーム以外の用途である
場合、売却代金が振り込まれるときに10.21%源泉徴収されてしまいます。
たとえ税の特例などを活用して節税していても、国をまたいだ取引だと売却代金を全額受け取れないのです。
ただし、本来の納税額が「売却価格×10.21%」より少ない場合、確定申告をすれば多く納めた税金は戻ってきます。
まとめ
海外に住んでいる方でも、日本国内にある不動産の相続と売却は可能です。
ただし、日本にいない以上、必要書類の取得や不動産業者とのやり取りといったさまざまな面で苦労することになります。
手続きの効率を考えれば、自分で不動産業者を見つけて売却するよりも、日本にいるほかの相続人に協力してもらったり、代理人を立てたりする方が手軽です。
信頼できる代理人と不動産業者を見つけて、不動産の売却を成功させましょう。