
不動産売却後の入金はいつ?売却前後の手続きや入金時の注意点を解説
2023.11.07
不動産売却代金の入金は、売買契約を交わす日と物件の引き渡し日の2回に分けて行われるのが一般的です。
多くの場合、売買契約のときは現金、引き渡し日は振込で売却代金が入金されます。
ただし、不動産売却代金をスムーズに入金してもらうためには、事前の調整や準備が必要不可欠。
そこで今回は、不動産の売却から入金されるまでの流れや、入金前後に必要な手続き、売却方法ごとの入金スケジュールだけでなく、入金時の注意点などを解説します。
不動産売却から入金されるまでの流れ
●入金までの大まかな流れ
不動産を売却し、売却代金が入金されるまでの流れは、以下の通りです。
・売却準備:不動産会社へ査定を依頼し、気に入った業者経由で売却開始
・売買契約の締結:買主が決まったら売買契約を締結し、手付金を受け取る
・引き渡し・決済:残代金の支払いと同時に、不動産を買主に引き渡す
仲介、つまり不動産会社経由で買い主を探す場合は、入金まで3~6ヵ月程度、不動産業者に買取をお願いする場合は、入金まで数日~数週間かかります。
●不動産売却代金の入金方法
不動産売却代金の入金方法は、多くの場合銀行振込です。
ただし、売買契約を交わすタイミングでは、買い主側がまだローンを利用できません。
そのため、売買契約時の手付金支払いに関しては、現金手渡しで受け取ることになります。
銀行振込でも現金手渡しであっても、やり取りする金額が大きいため、入金後は必ず通帳やネットバンキングなどを使って入金額を確認しましょう。
不動産売却代金の入金前後に必要な手続き
●入金前:引き渡し日当日に渡す書類や実印の準備
引き渡し日の当日には、以下のような書類が必要となります。
・登記簿謄本
・登記識別情報(不動産の権利証)
・固定資産税の納税通知書
・身分証明書
・住民票
・印鑑証明書
・実印
・家の鍵
書類が不足していると、残代金の受け取りや不動産の引き渡しができません。
また、住民票や印鑑証明書は、発行後3ヵ月以内のものを用意する必要があります。
必要書類を揃えていなかったり、当日に忘れ物をしたりすると手続きがストップしてしまうため、事前に必要なものをまとめておきましょう。
●入金前:境界線の確認
不動産は、境界線があいまいなまま売却すると、「隣地の所有者と境界線上にある塀の扱いでトラブルになった」「本来なら自分の土地なのに隣地所有者に勝手に使われている」といったクレームに発展しやすいです。
戸建てや空き地の場合、境界線を明確に示す境界杭の有無を確認し、ない場合は土地家屋調査士に依頼して境界を確定させましょう。
測量費用はかかりますが、売買契約前に測量を行っておけば、契約後や売却後にトラブルへ発展するリスクを減らせます。
●入金前:清算金や振込手数料の負担割合の相談
不動産売却では、売り主が事前に払っている固定資産税やマンションの管理費などを買い主と日割りで精算するのが一般的です。
ただし、売買契約を交わす前に清算金がいくらあるのか、振込手数料をどちらが負担するのかといったことを決めておかないと、引き渡し日当日にトラブルになる可能性があります。
売却価格が大きい分、振込手数料の負担も重いため、買い主から「そんなこと聞いていなかった」といわれないように、お金の話は入金前・契約前に同意を取っておきましょう。
●入金前:売却する住宅内の掃除・整理や引っ越し
不動産を引き渡す時は、空き家にしておくのが原則です。
そのため、売却が決まった時点で引っ越しの準備を進め、引き渡し前には掃除も終えておきましょう。
一般的に、売買契約を結んでから引き渡し日までの期間は、1ヵ月ほどです。
買い主が見つかってから新居を探すと、引き渡し日に間に合わず、仮住まいが必要になる場合もあるので、売却準備と平行して、少しずつ家の整理を進めていくことをおすすめします。
●入金後:契約書類の保管
不動産売却を行い、入金を受けた後は、不動産売却に関する書類を保管しておく必要があります。
なぜなら、売買契約書や登記関連の書類は、確定申告で必要になったり、後日法的トラブルが起きた際に提出を求められたりする場合があるからです。
書類を個別に保管すると紛失するリスクが高まるため、取引後は売却に関連する書類をファイル等にまとめたり、スキャンしてデジタルデータとしてバックアップしておいたりすると良いでしょう。
●入金後:確定申告
不動産売却によって利益が出た場合、または税の特例を使って節税する場合、不動産を売った次の年に確定申告をする必要があります。
確定申告の期間は、毎年2月の半ばから3月15日までの約1ヵ月間です。
定められた期間内に申告できないと、税の控除を利用できず、譲渡所得税が課税されたり、延滞税等を徴収されたりするので、入金後は確定申告の準備を進めましょう。
売却方法ごとの入金スケジュール
●仲介で売却する場合の入金スケジュール
不動産を仲介で売却する場合、不動産の売却代金は「売買契約の締結日」と「引き渡し日」の2回に分けて入金されます。
売買契約時に受け取るのは、売却価格の5~10%を相場とする手付金で、残代金を引き渡し日に入金してもらうという流れです。
売買契約の締結から引き渡しまで、一般的にローンの審査待ち時間等を考慮して1ヵ月ほど待つため、売却開始から1ヵ月で買い主が見つかれば2ヵ月後に、4ヶ月で買い主が見つかると5ヵ月後に売却代金を全額受け取れます。
●買取で売却する場合の入金スケジュール
不動産を買取で売却する場合、仲介よりも入金タイミングが早いです。
買取だと、資金力のある不動産会社が直接買い主となるため、広告を出し、市場で買い主を探す必要がありません。
宣伝広告に使う時間を省略できる分、買取業者の査定結果に納得できれば、数日から数週間程度で売却価格を入金してもらえます。
仲介に比べると、売却価格は相場より安くなるものの、短期間でまとまったお金を手に入れたい方には頼りになるサービスです。
●買い主と合意すれば入金日は調整できる
仲介で不動産を売却する場合、入金日は買い主との交渉次第で調整できます。
また、不動産によっては入金方法の相談も可能です。
次の住まいへの引っ越し準備に2ヵ月間は時間が欲しい、相場より安くするから現金支払いで、1週間後に決済して欲しいなど、その時々の状況に合わせて、買い主と入金方法や入金日をすり合わせましょう。
なお、入金日などを調整する場合は、売買契約を交わす前に各種条件の交渉をまとめ、契約書に記載しておくことが大切です。
契約書に記載していない口約束は、いざというとき証拠になりません。
書面に起こしておけば、入金や引き渡しに関するトラブルを予防できます。
不動産売却代金入金時の注意点
●売り主都合のキャンセルは手付金の倍返しが必要
売買契約時に受け取る手付金は、契約後にどちらかが解約した際の保証金という意味合いを持つお金です。
売買契約を結んだ後に売り主都合でキャンセルした場合、売り主は手付金を買い主へ倍返しする必要があります。
逆に、買い主の都合でキャンセルされた場合、売り主は手付金を返却する必要はなく、受け取ったお金を没収可能です。
売買契約以降は、キャンセルによってペナルティーが発生することを覚えておきましょう。
●特約次第では手付金を返すことになる
売買契約の特約には、「買い主が住宅ローン審査に落ちた場合、手付金なしで契約を解除する」住宅ローン特約というものがあります。
通常、売買契約後の契約解除は、手付金の放棄や倍返しを必要としますが、住宅ローン特約が適用される状況なら、手付金の返却が必要です。
もし、手付金の入金後にお金を使ってしまっていると、いざというときに手付金を返却できません。
入金された手付金は、引き渡しと残代金の決済が終わるまで、残しておきましょう。
不動産売却の入金時にありがちなトラブルとその対処法
●買い主が住宅ローン審査に落ちて取引できなくなった
売買契約は交わしたものの、買い主が住宅ローン審査に落ちてしまい、残代金が入金されなくなったというケースです。
この時、住宅ローン特約を定めていれば、売り主は買い主に手付金を返却し、契約を白紙解除して次の買い主を探せます。
しかし、ローン特約がない場合、契約解除するのか、手付金をどうするのかなどを一つひとつ買い主と交渉することになるのです。
買い主都合による契約不履行として、違約金を請求したり手付金を没収したりできる場合もありますが、買い主が素直に頷いてくれる保証はありません。
こうしたトラブルは、問題が起きてから対処すると大変です。
あらかじめ売買契約書上でローン特約や契約解除に関するルールを作っておいて、合意できる相手と取引することを心がけましょう。
●買い主からの入金が遅れる・分割払いを求められる
「不動産の代金は現金一括で払う」という条件で契約したにも関わらず、買い主側から入金が遅れるため待って欲しいといわれたり、分割払いを求められたりするというトラブルです。
しぶしぶ要求を飲んで支払いを待った結果、「他に良い物件が見つかったから、キャンセルする」と一方的に告げられるケースも少なくありません。
こういったトラブルを避けるためには、「ローン支払いに対応できる相手とだけ取引する」「支払いの遅延があった場合違約金を請求できるようにする」「一定額以上の担保を求める」といった対応を取ることが重要です。
まとめ
不動産売却代金の入金は、買取なら引き渡し時の1回、仲介だと売買契約日と引き渡し日の2回に分けて行われます。
ただし、境界線が曖昧だったり、決済日に必要な書類を準備できていなかったり、引っ越しが終わっていなかったりすると、スムーズに売却代金を受け取れません。
また、動かす金額が大きいだけあって、不動産売却は入金時のトラブルも多いです。
不動産を売る時は、売買契約書にサインする前に内容を確認し、住宅ローン特約を付けたりキャンセル時の対応を定めたりして、予期せぬトラブルを回避しましょう。