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不動産の売却益は分離課税?総合課税?課税方式の違いを解説

2023.11.06

不動産の売却益は分離課税?総合課税?課税方式の違いを解説

不動産を売って利益が出たら、譲渡所得税の納税が必要です。
ただし、譲渡所得税の課税方式は、給与や事業所得と異なる分離課税。
納税額を計算するときの流れや、確定申告書のどこに所得額や納税額を記載するかも違うため、譲渡所得税の課税方式について押さえておきましょう。

この記事では、分離課税と総合課税の違いから、分離課税のメリット・デメリット、譲渡所得税の計算方法まで解説します。

分離課税・総合課税とは

●分離課税とは

分離課税とは、所得の種類ごとに、個別で税額を計算する課税方式のことです。
給与所得や事業所得など、10種類に区分される所得の中でも、譲渡所得・退職所得・山林所得の3種類のみ分離課税で税額を計算することになっています。

なぜ分離課税という制度があるのかというと、分離課税がないと、不動産を売って一時的に収入が増えたとき、税の負担が大きくなり過ぎてしまうからです。
いわゆる所得税の税率は、所得が増えるごとに最高45%まで上がる累進課税。

たとえば、「不動産を売って2,000万円儲かったから、給与の600万円と合わせて年収2,600万円に対する所得税を取る」というルールだと、多くの方は税の負担に耐えられません。
そこで、「譲渡所得2,000万円の税金は別途計算する」というルールを作り、なおかつ分離課税の税率を総合課税よりも低くすることで、税の負担を抑えています。

●総合課税とは

総合課税とは、同じグループの所得をすべて合計し、控除を差し引いた総所得に対して課税する方式のことです。
基本的に、分離課税である譲渡所得・退職所得・山林所得以外は、総合課税で税額を求めます。
総合課税の税率は、5%から45%と分離課税よりも高いですが、所得ごとの控除を利用したり、赤字の所得があったら損益通算したりして総所得を減らせるのがポイントです。
また、「総所得に対して納税額◯万円」という計算をするため、いくら納税すれば良いのかわかりやすいというメリットもあります。

分離課税のメリット・デメリット

●メリット:総合課税よりも税率が低い

分離課税、特に譲渡所得税に関しては、総合課税よりも税率が低いです。
総合課税の所得税は、最高税率45%。
経費や控除等を差し引いた所得額が1,799.9万円を越えると税率が40%に、3,999.9万円を越えると45%に上がります。

しかし、譲渡所得税の税率は、譲渡所得が1億あっても2億あっても15%または30%のどちらかです。
また、分離課税は譲渡所得の金額のみで納税額を計算します。
本業の収入と合算する必要がないため、納税負担も軽いです。

●メリット:大きな額の控除を使って節税できる

分離課税は、節税効果の大きな控除が豊富に用意されています。
たとえば、マイホームを売却した場合、譲渡所得税では売却価格から3,000万円控除できる節税の特例を利用可能です。
サラリーマンが使える給与所得控除が最高195万円であることを考えると、破格だといって良いでしょう。
簡単にいえば、不動産の売却価格が3,000万円以下なら譲渡所得税はかかりません。

●デメリット:確定申告が必要

分離課税の所得があるときは、基本的に確定申告が必要です。
通常、サラリーマンだと確定申告は勤めている会社が行ってくれるので、自分では年末調整以外に何かをする必要はありません。
しかし、不動産を売って譲渡所得を得たら、翌年の2月16日から3月15日までの期間中に確定申告書を作り、税務署に提出する必要があります。
確定申告は、慣れていないと時間がかかる手続きですし、控除の利用要件も確認する必要があるので、不動産売却後は早目に準備を始めましょう。

分離課税の課税額はどうやって計算するの?

分離課税である譲渡所得の課税額は、「(譲渡所得-控除)×税率」で求められます。
ただし、譲渡所得の税率は、「不動産を売った年の1月1日時点で所有期間が5年を越えているかどうか」で変わるため、注意が必要です。
不動産の所有期間が5年未満の場合、譲渡所得税率は30%ですが、不動産の所有期間が5年超だと、譲渡所得税率が15%に下がります。
基本的に、不動産は5年超保有してから売る方がお得です。

不動産の売却時に使える特別控除

不動産の売却時に使える控除には、以下のようなものがあります。

  • マイホーム売却時の3,000万円控除
  • 相続で手に入れた家を売った場合の3,000万円控除
  • 家を買い替えるときに使える譲渡所得税の繰り延べ
  • 譲渡所得がマイナスになったときの譲渡損失の損益通算または繰越控除

譲渡所得の特別控除は、節税効果が大きいです。
ただ、利用する場合は自分で確定申告を行い、特例の申請をする必要があります。

まとめ

所得税の課税方式には、分離課税と総合課税の2種類があり、譲渡所得は分離課税です。
分離課税は、所得がどれだけ大きくなっても、いわゆる年収とは別に納税額を計算します。
多くの場合、所得税よりも税率が低く、節税効果の大きな控除も利用できるため、適切に準備すれば大幅な節税が可能です。

ただし、特例控除を受けるためには、確定申告をする必要があります。
課税方式の違いを知らないと、適切な納税や節税はできません。
不動産を売るときは、分離課税である譲渡所得税の納税方法を学ぶ必要があるでしょう。

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