
1981年以前の家を持っていると損!?不動産の耐震基準について解説
2022.03.08
不動産の耐震基準は、家を建てる時に最低限クリアすべき耐震性能です。
過去、日本では建築基準法の改正と共に何度か耐震基準も更新されており、基本的に新しい基準、新しい建物の方が地震に強くなっています。
そこで問題になってくるのが、現行法の基準を満たさない、旧耐震基準の扱いです。
この記事では、不動産の売りやすさや売却価格を左右する耐震基準について、解説します。
不動産の耐震基準とは
●旧耐震基準(1981年6月以前)
旧耐震基準は、建築基準法が制定された1950年から1981年5月31日まで適用されていた、最も古い耐震基準のことです。
旧耐震基準では、「震度5強の地震が起きても建物が倒壊しない」「補修すれば住み続けられる程度の損壊に抑えられる」耐震性が、住宅を建てるときの最低基準だと定められていました。
しかし、震度5を記録した1978年の宮城県沖地震で大きな被害が出たことによって、基準が大幅に見直されることになったのです。
●新耐震基準(1981年6月1日以降)
新耐震基準は、1981年6月1日以降の家に適用されている、耐震基準を指します。
震度5、中程度の地震に耐えられる耐震性を求めていた旧耐震基準と違い、「震度6強から震度7の大地震でも建物が倒壊しない」耐震性を求めるのが、新耐震基準の特徴です。
同じ耐震基準でも、耐震性には大きな差があります。
両方とも「耐震基準」と呼んだ場合、不動産がどちらの耐震基準で建てられたのかわかりづらくなってしまうため、不動産の世界では1981年6月以前の家を旧耐震、1981年6月1日以降の住まいを新耐震と呼び分けているのです。
●2000年基準(2000年6月1日以降)
1995年に甚大な被害をもたらした震度7の大地震、阪神・淡路大震災の影響を受けて、倒壊の被害が多かった木造住宅の耐震性が大幅に強化された耐震基準として、2000年基準が存在します。
新耐震基準の要件に加え、地盤の調査や基礎や柱の接合部分を強化する金具の取り付け義務化などが盛り込まれました。
2000年6月1日以降は、家を新築したり建て替えたり、大規模なリフォームをしたりする場合、2000年基準をクリアする必要があります。
1981年以前に建てられた旧耐震基準の家を持ち続けるデメリット
●家を持っている限り維持費と修繕費がかかる
1981年6月以前の家、旧耐震基準の家を持ち続けるデメリットは、維持費や修繕費がかかることです。
旧耐震の家は築年数が古く、老朽化しているため、新築や築浅物件に比べてさまざまな不具合が出やすく、補強や修理、メンテナンスの頻度も上がります。
耐震性の観点から見ても、地震が起きた時の危険性が高く、安全に住み続けるためには耐震性を底上げする工事、耐震改修が必要です。
また、家が寿命を迎えると、リフォームでは対処できなくなります。
取り壊しにもお金がかかりますし、マンションだと売りたくても売れなくなるので、旧耐震の家を持っているなら、最終的にどうするか考えておきましょう。
●放置すると税の優遇等を剥奪されるため損をする
もし、旧耐震基準の住まいを使う予定がなく、現在放置している場合、放置し続けると明確に損をします。
なぜなら、長期間放置され、適切に管理されていない住宅は、「特定空き家」に認定される制度があるからです。
日本には、土地を買って家を建てると、宅地の固定資産税が最大6分の1まで減額されるという税の優遇措置が存在します。
しかし、「庭木が邪魔になっている」「老朽化が激しく倒壊しそうで危険」「ゴミ屋敷になっている」等の理由で地域住民から通報を受け、自治体から持ち家が特定空き家に認定された場合、固定資産税の優遇を剥奪されてしまうのです。
特定空き家の指定を受けるまで、自治体から指導や勧告を受けることになりますし、最終的には自治体が強制的に家を解体し、その費用を請求されるため、旧耐震の家を放置すると社会的にも経済的にも損することになります。
売りたい不動産の耐震基準を調べる方法
●建築確認済証をチェックする
建築確認済証とは、住宅の設計や仕様が、建築基準法や地域の条例を守っていることを証明してくれる書類です。
違法建築を防ぐため、日本では家などの建物を建てる時、施工する前に設計などを自治体に伝えて建築確認することを義務付けられています。
建築確認済証には、建築確認の申請が出された日付が記載されているので、確認済証を見れば、どの耐震基準をクリアした住宅なのかを簡単にチェックできるわけです。
もし、建築確認済証が手元にない場合は、役所の建築課で「建築確認台帳記載事項証明」を発行したり、「建築計画概要書」の閲覧を申請したりすれば、家がいつ建ったのか調べられます。
●耐震改修の有無を確認する
旧耐震基準の住宅であっても、過去に耐震改修を行い、現行の耐震基準をクリアしていれば、古いだけで耐震性に問題のない不動産として売却可能です。
耐震改修の有無を調べる時は、過去に行ったリフォーム履歴や、工事の報告書などを探しましょう。
耐震改修は、内容次第で100万円以上かかる工事なので、実施していれば書類を残している可能性が高いです。
アパートやマンションといった集合住宅の場合は、管理組合に問い合わせてみましょう。
●耐震診断を受ける
資金に余裕がある場合、耐震診断を有料で受けるという手もあります。
耐震診断は、住宅の耐震性能が現行法の基準をクリアしているかどうかを、専門家に調べてもらうサービスです。
物件の現状を見て、耐震性に問題はないのか、補強が必要だとすればどういった工事をすれば良いのかなどを把握できるため、耐震診断を受けると取引の透明性を高められます。
中古不動産の買い主が最も避けたいのは、「目に見えない問題が隠れている不動産」を買ってしまうこと。
たとえば、1981年に建てられた住宅が2戸あるとして、「旧耐震基準だが、基礎も問題なく◯◯万円で耐震改修すれば安全に住める」ものと、「おそらく新耐震基準だが、証拠資料はなく現状どの程度、劣化しているのかも分からない」家があったら、多くの買い主は前者を選ぶでしょう。
不動産売却は、買い主に安心材料を提供することで、取引がスムーズに進みやすくなるため、耐震基準が明確にわからない場合は調査をおすすめします。
旧耐震基準かどうかで売却結果が変わってしまう
●売却価格が安く買い主から避けられやすい
旧耐震基準の住宅は、大地震が起きた場合に倒壊する危険があるので、地震大国の日本では人気がありません。
また、旧耐震基準住宅の安全性を高めるためには、高額な耐震改修が必要です。
築年数が古く、購入後修繕費やリフォームにお金がかかるケースが多いことも影響して、売却価格も安くなってしまいます。
同じ地域の物件でも、旧耐震だと売却に時間がかかるため、できるだけ良い条件で売りたいなら、綿密な売却準備が不可欠です。
●住宅ローンを利用できないケースが多い
旧耐震基準だと、ローンを組むのが難しいという問題もあります。
なぜなら、旧耐震の家は取引価格が安い分、担保としての評価も低いからです。
万が一、契約者がローンを滞納した場合、旧耐震の住宅を差し押さえて売却しても、ローンの残債を回収できる見込みが薄いため、旧耐震だと審査を突破できません。
ローンを利用できない分、現金一括で支払いができる買い主を探すことになるので、売却が難しいのです。
旧耐震の家を売るときのポイントと注意点
●相見積もりで仲介業者を探す
旧耐震の家は、1981年6月1日以降に建築確認が行われた新耐震基準の物件に比べると、売却のハードルが高くなります。
そこで重要なのが、物件の査定や宣伝広告、買い主との交渉等を代行してくれる、仲介業者の選び方です。
実は、不動産の仲介を行う業者には、それぞれの得意分野があり、実績や実力にも差があります。
どの業者に相談しても、同じような期間・金額で売却できるわけではないため、売却の難しい旧耐震の家を売るときは、築年数の古い家や旧耐震基準の物件売却に長けている業者と契約することが大切なのです。
ただ、査定を一社に依頼しても、業者の良し悪しはわかりません。
複数の業者へ同時に査定を頼み、相見積もりで各業者を比較しましょう。
●旧耐震であることを明記する
不動産を売却する際、買い主にとって不利な情報を隠すと、買い主の不信を招くだけでなく、契約解除や違約金の対象になってしまいます。
耐震性は、住宅購入者のほとんどが気にするポイントなので、旧耐震の家を売るときは、必ず広告や内覧の際に旧耐震基準であることを伝えましょう。
また、旧耐震基準の家は、ローンの利用が難しいです。
あらかじめ、現金決済になることを伝えておくと、買い主とのミスマッチを防げます。
●耐震改修を行って高額売却を目指す
資金に余裕がある場合、耐震改修を行うか、建物を解体し更地として売却するのがおすすめです。
耐震改修を行って現行の耐震基準を満たせば、住宅ローンを利用できるため、購入希望者の幅を広げられます。
また、更地にすれば、耐震性を考慮する必要がありません。
耐震改修や解体工事の費用と、工事によって得られるメリットを比較して、より良い選択をしましょう。
●売却期間を短縮したい場合は買取の利用もおすすめ
売却を急ぐ場合、また買い主がなかなか見つからない場合は、不動産会社の買取サービスが便利です。
買取だと宣伝広告の期間が不要なので、早ければ査定後数日以内に旧耐震基準の家を売却できます。
また、買取業者は資金力があり、リフォームや建て替えも自社で対応できるため、購入時にローンを使えないこともデメリットになりません。
まとめ
旧耐震基準である1981年6月以前に建築確認が行われた不動産は、古さと耐震性の問題から維持費や修繕費の負担が重く、放置して特定空き家になると固定資産税の優遇措置がなくなるため、売却することをおすすめします。
ただし、旧耐震基準の家は、一般的に不動産市場での人気がありません。
やみくもに買い主を探しても、良い取引ができる可能性は低いので、相見積もりで実績のある不動産仲介業者を見極め、必要に応じて耐震改修等を検討して、より良い売却結果を掴みましょう。