
持ち家を売って賃貸に住むのはアリ?住み替えのメリット・デメリット
2020.12.08持ち家を売って賃貸に住むという生き方は、柔軟なライフスタイルや、老後の過ごしやすさを重視する方にとって十分に現実的な選択です。
ただし、持ち家を売って賃貸物件に引っ越す暮らしが合うかどうかは、ご自分の年齢や好みによっても変わってきます。
絶対に持ち家の方が良い、必ず賃貸で満足できるという保証はないため、持ち家を売って賃貸に住むことを考えているなら、行動する前に住み替えの良し悪しを考えましょう。
本記事では、持ち家を売って賃貸に住むメリット・デメリットや、持ち家と賃貸どちらが良いか迷った時の判断基準、持ち家から賃貸へ住み替える際の注意点などをお伝えします。
持ち家を売って賃貸に住むことを選択するメリット
●まとまった資金が手に入る
持ち家を売って賃貸に住む最大のメリットは、まとまったお金を確保できることです。
仮に、家を2,000万円で売却した場合、単純に売り主は2,000万円近い現金を自由に使えます。
売却代金を老後の生活費として蓄えておいたり、投資に回したり、旅行や趣味を楽しんだりできるわけです。
自由に使える現金が手元にあるという事実は、精神的な安心感にもつながります。
特に、老後資金に不安がある、古くて売るのが難しい家を所有し続けるリスクが気になる方は、持ち家を売って賃貸に住むことを検討しましょう。
●好きな街・好きな家で暮らせる
住む場所や物件を自由に選べることも、持ち家から賃貸物件に住み替えるメリットです。
持ち家の場合、ローンの支払いも必要ですし、固定資産税などもかかるため、周辺環境に問題があっても、住宅そのものに不満があっても、そう簡単に引っ越せません。
しかし、賃貸ならいつでも気軽に引っ越せます。
故郷に戻ったり、住んでみたかった憧れの街に引っ越したり、自分に合った住環境を確認するためにさまざまな物件を転々としたりして、より暮らしやすい家を探せるのが、賃貸の魅力です。
●持ち家の維持・管理や修繕から解放される
持ち家は、固定資産税の支払いや雑草・庭木の処理、屋根や外壁の補修など、さまざまな維持費や管理費がかかります。
しかし、持ち家を売って賃貸に住む場合、物件の修繕や管理は大家がしてくれるため、家の維持について頭を悩ませる必要がありません。
給湯器が壊れたり、雨漏りしたりした時、管理会社や大家に連絡すれば対処してもらえるのは、意外と大きなメリットです。
賃貸を選ぶことで、住宅関連の予期せぬ出費を減らせます。
●「負動産」をきっかけとする相続トラブルを防げる
持ち家を売ることで、将来の相続トラブルを予防できるのも、賃貸を選ぶメリットの一つです。
不動産は、老朽化が進んで資産価値が下がると、売りたいと思っても買い主が見つからず、維持費だけが出ていく「負動産」になってしまいます。
持っているだけでお金がかかる、しかし売却して現金化するのも難しい「負動産」を残すと、相続で家族が揉める可能性を高めてしまうので、注意が必要です。
持ち家を売って賃貸に住んでいれば、「負動産」を残してしまうことはありません。
●老後の生活が楽
年齢を重ねると、階段の上り下りが難しくなったり、車を運転したときのリスクが高くなったりします。
しかし、駅の周辺に持ち家を建てたり、家中をリフォームしてバリアフリーにしたりするのは大変です。
その点、賃貸物件なら、車がなくても生活しやすい駅近の物件や、バリアフリー完備の住宅に入居できます。
広い戸建てから部屋数の少ないマンションに引っ越せば、日々の掃除も楽になるでしょう。
老後、より快適な住居を選べるのが、持ち家を売って賃貸に住むメリットです。
持ち家を売って賃貸に住むことを選ぶデメリット
●賃貸に住み続ける限り家賃がかかる
持ち家を売って賃貸に住む場合、住んでいる限り家賃を支払い続ける必要があります。
持ち家のように、ローンを完済すれば、住居費がいずれほぼゼロになるといった安心感はありません。
ほとんどの場合、老後は現役時代よりも収入が下がりますし、たとえばインフレで生活費が上がり、予定していた老後資金では足りなくなる可能性もあります。
賃貸を選ぶなら、安定した収入の見通しが必要です。
●年齢とともに賃貸が借りづらくなる
超高齢化社会が進行する日本では、賃貸物件のオーナーが高齢者の入居を断るケースが増えています。
なぜなら、高齢者は働き盛りの現役世代に比べて、孤独死や家賃滞納などのリスクが高いからです。
気に入る物件があっても、確実に入居できるわけではないため、持ち家を売って賃貸に住む場合、賃貸物件の目星を付けてから売却手続きを進めた方が良いでしょう。
持ち家と賃貸どちらが良いか悩んだときに考えること
●持ち家の売却価格と手持ちの資金で必要額を用立てられるか
持ち家を売って賃貸に住みたいと考える理由は、多くの場合、「住宅ローンの返済ができなくなった」「何らかの事情でまとまったお金が必要」「老後に備えて現金を確保したい」などです。
そこで重要なのが、目的の達成に必要なお金は、家を売れば用意できるのか計算すること。
たとえば、会社が倒産してローンの支払いが難しくなったのであれば、持ち家を売るよりも、金融機関に相談して返済条件を見直した方が良い場合もあります。
老後の収入が不安定で、賃貸の家賃を支払続ける余裕がないなら、古くても持ち家で生活し続ける方が良いでしょう。
持ち家か賃貸かは、今後の生活を左右する大切なポイントです。
持ち家を売って賃貸に住むか、持ち家に住み続けるか悩んだ時は、より金銭的な問題・将来の不安が少ない選択肢を取ることをおすすめします。
●条件の合う賃貸物件を借りられるか
持ち家か賃貸かで悩む場合、条件の合う賃貸物件を確保できるかどうかも重要です。
持ち家を売ってまとまった現金を用意しても、住みたいと思える賃貸が見つからなかったり、希望する賃貸物件の審査に落ちたりすると、新生活の満足度は下がります。
・立地
・家賃
・設備
・築年数
・賃貸契約の内容
など、賃貸物件に求める条件を細かく書き出し、条件に合う物件があるのか、自身の収入や年齢で入居時の審査に通る可能性があるかなどを不動産業者と相談して、複数の候補を見つけましょう。
●賃貸暮らしに馴染めるか
そもそも、賃貸暮らしが肌に合っているか、賃貸暮らしに馴染めるかを考えることも重要です。
たとえば、アパートやマンションといった集合住宅の賃貸物件は、戸建てに比べて足音や生活音の配慮が求められます。
戸建ての持ち家を売って賃貸に住むと、多くの場合家の広さも狭くなるため、場合によっては、家具や荷物の処分も必要です。
賃貸物件を探すときは、物件そのものの条件や家賃だけでなく、自宅の荷物量やご自身のライフスタイル、買い物や移動のしやすさなど、さまざまな項目を調べましょう。
持ち家を売って賃貸へ引っ越す際の流れ
持ち家を売って賃貸に住む際の流れは、以下の通りです。
・不動産業者に持ち家の査定を頼む
・賃貸物件の候補を見つける
・持ち家の売却活動を開始
・内覧や問い合わせの対応
・買い主が決まり次第、売買契約書を交わす
・賃貸物件の契約
・持ち家の引き渡しと代金の決済
・新居へ引っ越す
賃貸物件探しや新居の契約は、どのタイミングで行っても構いません。
住み替えをスムーズに進めたいなら、早目に審査を受けて賃貸借契約を結び、引っ越し作業をしつつ、持ち家の売却活動を進めるのもおすすめです。/p>
持ち家を売って賃貸に住む場合の注意点
●売却期間に余裕を持たせる
不動産売却には、3~6ヵ月かかるとされています。
売却期間に余裕がないと、買い主が見つからずに住み替えスケジュールが崩れたり、買い主との価格交渉で不利になったりしてしまうため、最低でも引き渡し日の半年前から持ち家の売却準備を始めましょう。
また、本格的な売却活動を始める前に、持ち家と似た物件の市場価格や取引事例などを調べておくと、悪徳業者の高額査定に騙されるリスクも減らせます。
●相見積もりを取る
持ち家を売る時は、複数の業者に査定を頼み、相見積もりを取りましょう。
なぜなら、仲介を手がける不動産業者によって、売却価格が上下するからです。
不動産業者は、各社得意分野や対応の誠実さ、売却の実績などが違います。
そして、各業者の違いは、査定結果や対応を比較してみないとわかりません。
持ち家の売却を急いでいても、少なくとも2~3社に相見積もりを依頼しましょう。
●認知症などになる前に売却手続きを進める
不動産の所有者が認知症と診断された場合、本人の判断だけでは家を売れなくなってしまいます。
所有者が認知症になると、不動産の売却には成年後見人が必要です。
それだけでなく、後見人を立てた上で、裁判所から売却の許可を得る必要があります。
病気や入院、認知症で所有者の判断能力に問題が出ることで、不動産売却の難易度が跳ね上がるため、不動産売却は本人が元気なうちに行いましょう。
リースバックなら持ち家を売らずに住み続けられる
リースバックとは、持ち家を不動産業者に売却し、賃貸契約を結ぶことで、「自分が売った家」に住み続けられるサービスです。
相場より高い家賃を支払う必要はありますが、まとまった額の現金を受け取れますし、契約次第では一度手放した家を買い戻せます。
もし、持ち家の売却を考えている理由が「老後資金の不安」や「一時的な資金難」であり、できれば住み慣れた家を離れたくないという場合は、リースバックを選ぶのもおすすめです。
まとめ
持ち家を売って賃貸に住むという決断は、老後資金を確保したい、故郷や憧れの土地で暮らしたい、持ち家の管理から解放されたいなど、さまざまな希望を叶えられる選択肢です。
一方で、賃貸暮らしには、今後、一生家賃がかかる、高齢になると借りられる物件が減るといったデメリットも存在します。
万人に賃貸をおすすめできるわけではありません。
住み替えがベストな選択かを考えた上でスケジュールを立て、相見積もりを駆使して持ち家の売却を成功させましょう。