
心理的瑕疵物件とは?瑕疵の判断基準や売却時の注意点を解説
2019.10.04心理的瑕疵物件とは、住居としては問題がないものの、過去の事件・事故や周辺環境の影響で、買い主に心理的な抵抗感や忌避感を与えてしまう物件のことです。
心理的瑕疵物件は、見た目がきれいで築年数が浅くても、人気がないためなかなか売れません。
売却する際、心理的瑕疵について買い主へ告知する義務があるなど、扱いの難しい物件なのです。
今回は心理的瑕疵物件の定義や瑕疵の判断基準、売却時の注意点などを解説します。
心理的瑕疵物件とは?
●心理的な問題で買い主に避けられてしまう物件のこと
心理的瑕疵物件とは、建物や土地そのものに問題がなくても、過去に起きた事件や事故、周辺環境の問題で、買い主に心理的な抵抗感・嫌悪感・忌避感を与えてしまう物件のことです。
たとえば、以前住人が自殺している、凄惨な殺人事件の現場になった、火事が起きた、近所に墓地など嫌がる方の多い施設がある場合、心理的瑕疵物件となります。
日本では、不動産に関する重大な欠陥や問題点を瑕疵と呼んでおり、瑕疵のある物件を売却する際は、買い主に対する瑕疵の告知が必要不可欠です。
そのため、心理的瑕疵物件を売るためには、どういった内容が心理的瑕疵に当たるのか、どのように告知すれば良いのかを知っておく必要があります。
●精神的瑕疵と心理的瑕疵は同じもの
精神的瑕疵と心理的瑕疵の違いに悩む方もいますが、精神的瑕疵と心理的瑕疵は、同じものです。
どちらの言葉も、「買い主が購入を嫌がる瑕疵物件」という意味で使われるため、精神的瑕疵と心理的瑕疵を分けて考える必要はありません。
ただし、住宅の瑕疵には、心理的瑕疵以外にも3種類の瑕疵があります。
瑕疵の内容によって告知義務も若干変わってくるため、違いを押さえておきましょう。
心理的瑕疵以外にも3種類の瑕疵がある
●物理的瑕疵
物理的瑕疵は、建物や土地自体に、何らかの重大な問題や欠陥がある物件を指す言葉です。
具体的には、雨漏りや基礎・壁のひび割れ、土壌汚染にシロアリ被害などが、物理的瑕疵となっています。
物理的瑕疵物件は、名前の通り物理的に建物が劣化し、耐久力や機能性が落ちているため、市場価値が低く、売却難易度も高いです。
そのままの状態では売れない可能性が高いので、売却する際に修繕工事を行い、安全性を確保する必要があります。
●法律的瑕疵
法律的瑕疵は、建築基準法や都市計画法、消防法といった「建物に関する法律」に違反していたり、法的な問題で建て替え等が制限されていたりする物件のことです。
たとえば、自分勝手な増加築によって、建ぺい率や容積率をオーバーしている住宅や、消防法で定められている消火設備を置いていない物件などが、法律的瑕疵物件と呼ばれます。
建築された当時は問題がなかったのに、法改正で違法になってしまったなど、売り主も瑕疵があることを知らずに売ってしまうケースがあるため、家を売る時は法律的瑕疵の有無をチェックすることが重要です。
●環境的瑕疵
環境的瑕疵は、物件の周囲環境に問題があるケースを指します。
具体的な事例としては、以下の通りです。
・埋立地や海・川などに近く災害リスクが高い
・周辺に工場・鉄道・高速道路があり騒音や振動に悩まされる
・墓地が近い
・近くに風俗店や反社会的勢力の事務所などがある
・周辺の建物との兼ね合いで日当たりや風当たりが悪い
・近所に問題を起こす住民がいる
個人の努力で解決できない問題が多く、売却に時間がかかります。
●心理的瑕疵とその他瑕疵との違い
物理的瑕疵・法律的瑕疵・環境的瑕疵と心理的瑕疵の違いは、物理的に瑕疵を取り除けないことです。
たとえば、雨漏りによる物理的瑕疵や、現行の耐震基準をクリアしていないことによる法理的瑕疵は、雨漏りを修繕したり、耐震改修をしたりすれば、瑕疵物件ではなくなります。
しかし、心理的瑕疵物件は、「何となく嫌だ」「縁起が悪い」といった感情で評価が下がっている不動産です。
何らかの工事をしても、心理的な忌避感や嫌悪感は解消できないため、問題を解決して売るという対策が取れません。
不動産売却における心理的瑕疵物件のデメリット
●市場で人気がなく買い主が見つからない
心理的瑕疵物件は、不動産市場で人気のない物件です。
もちろん、世の中には「心理的瑕疵物件に住みたい」「安ければ気にならない」という方もいますが、割合としては少数派なので、たとえ立地や間取りが良くても、心理的瑕疵物件は売却に時間がかかります。
そのため、心理的瑕疵物件の売却には、気長に問い合わせを待ったり、売り込むターゲットを決めて広告作りをしたりする工夫が必要です。
●高額売却を期待できない
心理的瑕疵物件には、高額売却を期待できないというデメリットもあります。
なぜなら、心理的瑕疵物件は、相場よりも安い価格にしないと売るのが難しいからです。
また、買い主側が心理的瑕疵物件の売りづらさを知っており、さらなる値下げを持ちかけられる場合もあります。
価格交渉を乗り切るためには、心理的瑕疵物件を売るために、どこまで値下げできるのかをあらかじめ考えておくことが重要です。
●特殊清掃などが必要になる場合がある
殺人事件が起きた物件や、住人が孤独死した後、発見まで時間がかかった物件は、売却前に特殊清掃が必要になる場合があります。
特殊清掃は、通常の清掃では落とせない匂いやシミなどを落とすためのサービスです。
住居の状態によっては、数万円から数十万円かかるのですが、孤独死で本人に財産がなく、家族とも連絡が取れない場合、売り主が清掃費用を払ってでも売却準備を進めることになります。
こうした金銭的負担も、心理的瑕疵物件の売却を難しくする要因の一つです。
心理的瑕疵の判断基準
●自殺・他殺・強盗・火事等の現場になった
自殺・他殺・強盗・火事等の事故・事件現場になった物件は、心理的瑕疵物件の代表例といって良いでしょう。
残酷な事件があった物件は、買い主に強い不安感や恐怖心を与えるため、資産価値や市場価格が大幅に下がります。
特に、事件の内容が凄惨であったり、全国ニュースに取り上げられたりすると、全国規模で売却の難易度が上がるため、売りたいと思ってもなかなか手放せません。
なお、住居内で住人が亡くなっていても、自然死や老衰であれば、心理的瑕疵とは判断されないケースが多いです。
心理的瑕疵と判断されるのは、事件性がある場合や、遺体の発見まで時間がかかった場合に限られます。
●近所に墓地や反社会的勢力の事務所といった嫌悪施設がある
墓地や葬儀場、ごみ処理施設、反社会的勢力の事務所など、周辺住民に不快感や嫌悪感を与えてしまう嫌悪施設が近所にある場合も、心理的瑕疵物件です。
騒音や臭いなどで実害が出ていても、逆に一切の実害がなかったとしても、近くに嫌悪施設があれば心理的瑕疵物件として扱われます。
漠然とした不安感や、悪いイメージが先行して買い主から忌避されてしまうため、その物件だけでなく、地域全体の地価が下がりやすいです。
●近隣住民とのご近所トラブル
近隣住民とのトラブルが頻発しているエリアの物件も、心理的瑕疵物件として扱われる場合があります。
わかりやすいものとしては、昼夜を問わず騒音を出す住民がいて眠れない、近所にゴミ屋敷がある、しつけのできていないペットによる迷惑行為が起きている、ゴミ捨て場の利用マナーが悪く、異臭や生ゴミの問題があるなどです。
売却したい物件そのものに問題がなくても、周辺環境が著しく悪い場合は、心理的瑕疵物件として売ることになります。
心理的瑕疵物件を売るときのポイント
●心理的瑕疵物件の扱いに長けた不動産会社に相談する
心理的瑕疵物件を売るときのポイントは、心理的瑕疵物件の売却実績が豊富な不動産会社を頼ることです。
心理的瑕疵物件を、一般的な住宅と同じように売り出しても、多くの場合、期待した売却結果になりません。
不動産会社の中にも、訳あり物件の取り扱いに長けた会社とそうでない会社が存在します。
心理的瑕疵物件を売るときは、心理的瑕疵物件の売却実績が豊富な業者を探して相談し、売却プランを決めましょう。
●買取業者を利用する
心理的瑕疵物件は、不動産市場で買い主を見つけるのが難しいため、買取業者を活用するのもおすすめです。
買取業者への売却であれば、物件広告を出す必要がないため、売り主のプライバシーを守れますし、精神的な負担も軽減できます。
ただし、不動産市場で買い主を探す時間や手間がない分、買取価格が市場価格より2~3割安くなることは、覚えておきましょう。
心理的瑕疵物件を売却する際の注意点
●心理的瑕疵を隠して売るとペナルティーを負う
日本の法律上、心理的瑕疵を含む瑕疵物件の売却時は、瑕疵について売り主に説明することが義務付けられています。
心理的瑕疵があることを隠して売却した場合、後日買い主から損害賠償請求・売買契約の破棄等を求められる可能性があるため、瑕疵の隠蔽は絶対に避けましょう。
問題を解決すれば告知義務がなくなる物理的瑕疵や法律的瑕疵と違って、心理的瑕疵には時効がありません。
事件から約50年経っていても、事件について知らせずに売ったのは、売り主の告知義務違反であると認められた判例もあるため、丁寧な告知が必須です。
なお、心理的瑕疵の告知は、口頭説明だけでは不十分とされており、書面で説明する必要があります。
まとめ
心理的瑕疵物件とは、過去に起きた殺人事件や近隣トラブル、嫌悪施設などの影響で、買い主に抵抗感や嫌悪感を与える物件のことです。
売却時に書面で瑕疵について告知することが義務付けられており、心理的瑕疵を隠して売却すると、損害賠償や契約解除の対象になってしまいます。
そのため、心理的瑕疵を売るときは、訳あり物件の売却に長けた不動産会社に相談して告知事項をまとめたり、心理的瑕疵を気にしない買い主をターゲットにした売却プランを立てたりすることが重要です。
信頼できる仲介業者や買取業者を見つけて、心理的瑕疵物件を売却しましょう。