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隣人トラブルの原因は境界問題?訳ありな土地を売却するときの注意点

2018.11.27

隣人トラブルの原因は境界問題?訳ありな土地を売却するときの注意点

隣人トラブルを抱えている不動産は、良い条件で売るのが難しいです。
隣人トラブルの多くは、隣地境界線のあいまいさや越境といった問題が原因で起こります。
そこで重要なのが、隣人トラブルや境界問題の対処法を学ぶこと。

本記事では、土地の境界に関する基礎知識や、トラブルの具体例と解決策、境界問題を抱えた訳ありの土地を売却するときの注意点などをご紹介します。

隣人トラブルと境界問題の基礎知識

●なぜ隣人トラブルが不動産売却の妨げになるのか

隣人トラブルや境界問題があると、不動産が売れなくなるのは、どちらも買い主にとって余計なリスクだからです。

たとえば、隣家の屋根や室外機が越境してきている場合、越境状態を解決するためには、隣家に土地を一部買い取ってもらうか、隣人のお金で越境している屋根や室外機を撤去してもらう必要があります。

しかし、買い主からすれば、そもそもこうした交渉をするメリットがありません。
購入後に面倒な交渉が必要になる可能性があるなら、最初から問題なく使える土地を買った方が楽なので、トラブルを抱えた土地は売れないのです。

だからこそ、土地を売るときは、隣人トラブルや境界問題を解決してから、売却手続きに移る必要があります。

●境界とは?土地売買における基本知識

境界とは、土地と土地を区切る境目のことです。
公法上、つまり登記簿に登録されている公的な土地の境界線である「筆界」と、実際の使用状況を示した「所有権界」が存在します。

ここで重要なのが、筆界と所有権界の不一致が、境界問題になってしまうこと。
たとえば、お隣さん同士で「土地のこの部分は好きに使って良い」といった話し合いを行った場合、公的な境界と実用上の境界がズレることになります。
そのまま数十年経ち、家の売却や相続で住民が変わると、「なぜか自分の土地を隣人に使われている」「購入した土地を自分で利用できない」といったトラブルが起こるわけです。

慣れ親しんだ土地であっても、普段意識している境界が、公的なものとは限りません。
調べてみたら、実は筆界と所有権界がずれていたというケースが少なくないため、土地を売るときは売却前に調査が必要なのです。

●トラブルを見極める上で重要な隣地境界線とは

隣地境界線とは、土地の外周である敷地境界線の中でも、隣地に接している部分のことを指します。
一般的に、金属やプラスチック等の素材で作られた「境界標」のある位置が、土地と土地の境目です。

ただ、もともと境界標が設置されていない土地や、工事で一時的に境界標を動かした後、戻されていない土地も存在します。
越境しているかどうかを判断する基準は、「隣地境界線を越えているかどうか」なので、土地を売るときは、隣地境界線を確認しましょう。

不動産売却を妨げる隣人・境界トラブルの例

●建物や塀・樹木の越境

境界問題の中でも、特に隣人トラブルへつながりやすいのが、越境です。
住宅の屋根やベランダ、庭木の枝に塀などが越境していると、不動産の価値は下がります。

なぜなら、越境物は他人の財産であり、たとえ不法侵入している状態でも勝手に撤去できないからです。
越境物の撤去にもお金がかかるので、隣人に撤去を求めても、対応してもらえないケースが少なくありません。
シンプルですが、解決するのが難しい境界問題です。

●塀の所有権や境界線の位置について隣地の所有者と意見が合わない

隣地境界線上にあるブロック塀やフェンスの扱いも、揉めごとの原因になっています。
塀やフェンスが互いの敷地内に収まっていれば問題はありませんが、境界をまたいでいる場合、「塀がどちらの所有物なのか」「取り壊す場合どちらがお金を出すのか」で意見が対立することが多いからです。

古い住まいだと、いつ塀を立てたのか、どちらがお金を出したのかなども分からなくなっているケースも少なくありません。
当時の状況がわかる資料の有無で、交渉のしやすさが大きく変わるため、隣地境界線にかかる塀やフェンスがある場合は、外構工事の発注書や領収書などを探しておくと良いでしょう。

●境界を確定させたいが隣地の所有者と連絡がつかない

越境物の撤去工事を要求したり、両家がお金を出し合って立てた隣地境界線上のブロック塀を崩したり、測量をしてあいまいな境界線を確定させたりするためには、隣地所有者の合意が必要です。

しかし、隣地の所有者と連絡がつかない場合があります。
良くあるのが、隣地の所有者が別の場所へ引っ越しており、連絡先がわからないケース。
単に連絡先がわからないだけなら、隣地の登記簿を取り寄せ、登記簿上の連絡先に封書を送るといった手も取れますが、確実に返事をもらえる保証はありません。
不動産を放置している時間が長くなればなるほど、相続等で権利者が増えたり、所有者が天涯孤独で誰に連絡すれば良いのかわからなくなったりするので、隣地が空き家・空き地になっている場合は、早目に境界問題に着手する必要があります。

●隣地が集合住宅で測量等の合意が取れない

もし、隣地が区分所有のマンションやアパートだったり、複数回の相続によって名義人が何名もいたりする場合、土地の測量をする際に、「隣地の権利者全員」の合意が必要です。

当然のことながら、1人の同意を取るよりも10人の同意を取るほうが難しいため、隣地の権利者が複数いると、交渉が中々進みません。
全員の家を訪ねて、測量に同意してもらえるようお願いするのは現実的ではないので、権利者が複数いる場合、物件の管理組合や管理会社に交渉を持ちかけたり、名義人の代表者を立ててもらったりして、交渉の窓口をまとめると良いでしょう。

境界問題が隣人トラブルにつながる原因

●そもそも登記が不正確

・登記簿上の敷地と、実際の土地面積が違う
・境界標が公的な土地の境界とは違う場所にある
といったトラブルは、そもそも土地の登記を始めたとき、測量技術が未熟だったり、目視で大雑把に土地の記録を取ったりしていたことが原因になっています。

土地の登記は、原則、権利者が更新するまで中身が変更されません。
歴代所有者の誰かが測量を行い、土地の面積や境界線をアップデートしないと古い登記のままなので、境界があいまいな土地や、筆界と所有権界の不一致が存在するのです。

●当初は問題なくても時間の経過でトラブルに

時間の経過と共に、隣人との関係性が希薄になった結果、今まで問題になっていなかったことも、問題になってしまうことがあります。

たとえば、最初は多少の越境や駐車スペースのはみ出しをお互い様だと考えていたが、売買や相続によって所有者が変わり、「お互い様」が通用しなくなったというケースです。
関係が一度こじれると、お互いに冷静な対応が取れず、トラブルの解決が遠のいてしまいます。

●相続や分筆によって問題が複雑化した

隣人トラブルや境界問題を複雑にしてしまう原因のひとつが、不動産の相続や分筆による、所有権の細分化です。
不動産は、ひとつの土地を2人に50%ずつ相続したり、もともと一つだった土地を分割し、境界線を引き直して複数人に売買・贈与したりできます。
1回目の相続で一つの土地を3人で共有し、さらにその中の一人が亡くなって持ち分を2人で分けるといった手続きが繰り返されると、そう簡単には境界確認の合意を取れない、訳ありの土地が生まれてしまうのです。

隣人トラブル・境界問題を解決する方法

隣人トラブルや境界問題を解決する方法は、隣地の所有者と話し合うこと。
普段から付き合いがあり、測量や境界線の確認、越境物の撤去を快く引き受けてもらえる場合、何の問題もなくただの土地として売却できます。

しかし、全ての交渉がスムーズに進むわけではありません。
隣地の所有者と和やかに交渉するのが難しい場合は、弁護士を立てたり、一方の同意がなくても測量や境界の確定ができる手続き、「筆界特定制度」を法務局に申請したりして、問題解決を目指しましょう。

隣人・境界トラブルを抱えた土地を売却する際の注意点

●訳ありであることを隠さない

境界の不一致や越境などのトラブルを抱えた土地を売却するときは、売り主として買い主に不動産の問題点を告知する義務があります。
仮に、引き渡す土地に問題があることを知らなくても、売り主の責任を問われるため、土地を売るときは隣人トラブルや境界問題の有無を調べることが重要です。
たとえ問題を解決できなくても、買い主に不利益のある情報を積極的に開示することで、買い主の信頼を得やすくなるというメリットもあります。

●当事者同士で交渉しない

隣人トラブルや境界トラブルが発覚したときは、できるだけ自分で直接隣地の所有者と交渉しないようにしましょう。
なぜなら、土地に関するトラブルは、話がこじれやすいからです。
合理的に考えれば、相手側も測量に同意したほうが良いという状況でも、相手に嫌われてしまうと、協力を得られません。

ただ、人によっては、いきなり弁護士から連絡があると、身構えてしまう場合もあります。
相手によっては、挨拶をして顔見知りになってから、弁護士にバトンタッチすることも考えましょう。

●土地の扱いに長けたプロの力を借りる

トラブルを抱えた土地を売るときに重要なのが、土地の扱いや売買に長けた不動産業者の力を借りることです。
隣人トラブルや境界問題を抱えた土地の売却経験が豊富な業者なら、より良い条件で不動産を売るためには何をすれば良いのか、交渉をする際どういった点に気をつければ良いのかなど、さまざまなアドバイスを受けられます。

とはいえ、不動産業者の良し悪しは、一目で判断できません。
複数の業者に見積もりを頼み、対応や実績を比較して、契約する業者を決めましょう。

まとめ

隣人トラブルや境界問題がある土地は、売却難易度が高いです。

ただし、不動産業者や弁護士、土地家屋調査士といった専門家の力を借り、上手く問題を解決できれば、訳ありの土地も一般的な土地と同じように売却できます。

多くの場合、問題解決に時間や手間をかけたほうが得するため、隣地の所有者にも買い主にも誠実に対応し、スムーズな売却を目指しましょう。

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