
親族間売買は住宅ローン控除の対象になる?制度の要件を解説
2018.11.22親族間売買でも、控除の利用条件をクリアしていれば、住宅ローン控除を利用可能です。
ただし、不動産の親族間売買は、第三者同士の売買に比べて制約が多く、取引を丁寧に進めないと住宅ローン控除を利用できなくなってしまいます。
そこで重要なのが、住宅ローン控除の利用条件や、親子間売買の注意点を把握しておくことです。
本記事では、住宅ローン控除の解説や、親子間売買で住宅ローン控除を受けるための要件、住宅ローン控除を受ける際の注意点などを解説します。
住宅ローン控除とは?基本的な仕組みを解説
●住宅ローン控除の概要
住宅ローン控除とは、家を買う時にローンを組むと、最大13年間、納めた所得税や住民税の中から、年末の住宅ローン残債0.7%が控除されるという減税制度です。
還付金の額は、ローンの借入額や納税額によって変わりますが、仮に3,000万円のローンを組んだ場合、毎年10万円以上の還付金が振り込まれます。
所得税・住民税の負担が、13年間毎年10万円以上減る、つまり毎年10万円分自由に使えるお金ができると考えれば、いかにお得な制度かイメージできるでしょう。
●住宅ローン控除の適用条件
住宅ローン控除の適用条件は、新築・買取再販・中古住宅で若干異なります。
住宅種別ごとの利用条件は、以下の通りです。
◯共通の条件
・床面積50平方メートル以上
・所得が合計2,000万円以下
・返済期間10年以上の住宅ローンを組むこと
・購入後半年以内に入居すること
・過去数年間住宅ローン控除を利用していないこと
◯新築住宅
・住宅性能が省エネ基準に適合していること
◯買取再販(不動産業者が買い取り、リフォームして再販している住宅)
・不動産業者が買い取り2年以内にリフォームして再販した住宅であること
・不動産業者が買い取った時点で築10年以上
・物件価格の20%以上の金額をかけてリフォームしている
・業者のリフォームによって耐震性等が現行基準を満たしている
◯中古住宅
・耐震改修等で現行の耐震基準をクリアしていること
●控除を受けるために必要な手続き
住宅ローン控除を受けるためには、家を買った初年度に確定申告をする必要があります。
確定申告は、1年間で稼いだ収入や経費、控除を税務署に申告し、納税額を確定させる手続きのことです。
減税につながる控除は、利用条件を満たしていても自動で適用されず、申告時に申請する必要があるため、新居の登記事項証明書や売買契約書のコピー、住宅ローンの残高証明書等を自身で用意して、申告期間中に提出しましょう。
なお、会社員の場合、初年度に確定申告を行い、住宅ローン控除の申請を出せば、2年目以降は会社に住宅ローンの残高証明書を提出するだけで、控除の手続きをやってもらえます。
親族間売買とは?一般的な売却手続きと何が違うの?
親族間売買の定義は、文字通り家族または親戚の間で不動産を売買することです。
一般的な不動産売買との違いは、親子間・親族間の不動産取引は、「相続税や贈与税を逃れ、安く財産を渡す手段」という疑いを持たれやすいこと。
親しい間柄ということもあって、売買条件の調整がしやすい一方、たとえ善意であっても不動産を相場より安く売買すると、贈与税の対象になってしまいます。
親族間売買は、第三者間での売買に比べて、税務署に取引内容を厳しくチェックされがちなので、住宅ローン控除を受けるために、適正価格での取引を心がけましょう。
親族間売買で住宅ローン控除を受けるために必要なこと
●住宅ローン審査をパスしている
親族間売買で住宅ローン控除を受けるためには、住宅ローン審査をパスする必要があります。
住宅ローン審査は、借入額や本人の返済能力、利用する金融機関の審査の厳しさによって難易度が変わるため、まずは無理のないローンを組むことを優先しましょう。
具体的には、借入額を年収の5倍前後、1年間の返済額が手取り年収の20~25%以下になるように抑えることが大切です。
また、住宅ローン以外にローンを組んでいたり、税金・各種借金を滞納していたりすると、借り入れの上限額が狭まります。
親族間売買だと、ローンを組めない金融機関も少なくありません。
余裕のある返済プランを立てて、審査落ちを避けましょう。
●返済期間10年以上のローンを組む
住宅ローン控除を利用する際の必須条件が、返済期間10年以上のローンを組むことです。
住宅ローン控除は、苦労して長期間のローンを組む、一般人の金利負担を抑えるための制度なので、十分に頭金を用意できる場合であっても、ローンの返済期間は10年以上に設定しましょう。
ただし、住宅ローンの返済期間が長くなればなるほど、支払う金利の総額は高くなります。
基本的には、20年ローンや30年返済のローンを組み、住宅ローン控除を受けつつ、繰り上げ返済で月々の返済額を減らしていくのがお得です。
●ローンで購入する物件が一定の条件をクリアしている
住宅ローン控除の適用を受けるためには、購入する住宅の床面積が50平方メートル以上(合計所得1,000万円以下なら40平方メートル以上)あり、なおかつ住宅の半分以上を住居として使う必要があります。
これは、住宅ローンを使って、事務所・店舗兼住宅などを建てられないようにするためのルールです。
また、住宅性能にも要件があります。
新築や買取再販の場合は、省エネ基準をクリアしている必要があり、中古住宅の場合は最低でも現行の耐震基準を満たしている必要があるため、家を買うときは住宅性能や築年数もチェックしましょう。
●売買した家に購入者が住む
住宅ローン控除を受けるためには、ローンで買った家に購入者が住む必要があります。
家が完成してから、または家を購入してから半年以内に引っ越す必要があるため、ローンで家を買ったらできるだけ早く新居に移りましょう。
もし、購入したマイホームを半年以上放置すると、その他の条件をクリアしていても、住宅ローン控除を利用できません。
●買い主と売り主は同居したり仕送りをしたりしていない
住宅ローン控除の利用条件に、「生計を一にする親族との取引はNG」というものがあります。
生計を一にするとは、簡単にいうと買い主・売り主が同居している、もしくは仕送りをしている状態のことです。
たとえば、親が住んでいる実家を子どもがローンで購入し、購入後も親子で同居する場合、住宅ローン控除の利用を認めると、ローンの名義人である子どもだけでなく、同居している親も金銭的に得することになります。
親族間売買で同居しない世帯より、同居する世帯の方が得するのは不公平なので、親族間売買で住宅ローン控除を利用するためには、買い主と売り主がそれぞれ独立した生活を送っている必要があるのです。
●買い主の年収が合計2,000万円以下
住宅ローン控除は、年間の所得が2,000万円以下の時のみ利用できます。
所得とは、年間の収入から、経費と控除を差し引いた金額のこと。
住宅ローン控除を始めとした税制優遇の多くは、所得が限られる方を補助するために作られた制度なので、一定以上の所得があると、控除の対象になりません。
ただし、住宅ローン控除を利用できないのは、あくまでも「合計所得2,000万円を超えた年」だけです。
たとえば、13年間ある控除期間の内、3年目のみ投資で大儲けして所得が2,000万円を超えた場合、1~2年目と4~13年目の計12年間は、住宅ローン控除を受けられます。
相続や株取引など、近々まとまった額の所得が増える予定があり、住宅ローン控除を最大限に受けたい場合は、不動産の売買タイミングを調整すると良いでしょう。
親族間売買で住宅ローン控除を受けるための注意点
●不動産業者の査定を受け適正価格で売買する
不動産の親族間売買で住宅ローンを利用する際、最も注意して欲しいのが、適正価格で売買することです。
親族間取引では、良かれと思って不動産を安値で売買すると、「買い主から売り主への贈与」とみなされてしまいます。
税務署によって、取引の実態が贈与だと判断された場合、売買価格と相場の差額に対して贈与税がかかるため、親族間売買では、客観的に見て妥当な価格で不動産を売買することが大切です。
ただし、不動産の適正価格は、立地や築年数、地域の不動産需要等によって変動します。
不動産業者の査定を受け、地域の相場に合わせた価格で売買しましょう。
●ローン返済中の家を売買する場合売却時にローンの完済費用がかかる
ローン返済中の家を親族から購入する場合、売却時に売り主のローンを完済する必要があります。
売買価格が安く、物件の売却代金で売り主がローンを完済できない場合、売却手続きそのものが止まることになるため、注意が必要です。
ただし、お金が足りないからといって、相場より高く家を買い取ると、買い主から売り主への贈与となってしまいます。
親族間売買は、買い主・売り主の双方共に、ある程度の資金力が求められるため、必要額を用意できるか計算した上で、売買を進めましょう。
親族間売買で住宅ローン控除を利用する時のポイント
親族間売買で住宅ローン控除を利用する時のポイントは、不動産業者に相談することです。
親族間売買は、お互い気心の知れた仲なので、買い主と売り主だけで取引を進めると、契約内容を口頭確認で進めてしまったり、相場から外れた価格で不動産を売買してしまったりする可能性があります。
契約書や査定価格の根拠がない取引は、余計なトラブルの元です。
親族間売買をするときは、不動産業者に仲介を頼んで物件の査定をしてもらい、法的に有効な契約書を交わして、適正価格で売買を進めましょう。
まとめ
親族間売買で住宅ローン控除を受けるためには、住宅ローン控除の要件をクリアした上で、客観的に見て贈与にならない取引をする必要があります。
親族間取引は、第三者との不動産売買に比べて、金融機関の審査も税務署のチェックも厳しいため、誰が見ても問題のない売買をすることが重要です。
そこで重要なのが、親族間売買実績の豊富な不動産業者を頼ること。
プロの目で適切な査定をしてもらい、住宅ローン控除を含めた節税の特例を使いこなして、買い主・売り主がお互い満足できる取引を目指しましょう。