
自分の土地に他人の建物がある場合はどうすれば良い?売却方法を紹介
2018.01.01自分の土地に他人の建物がある場合の対応は、底地をそのまま売却する、何らかのかたちで名義を統一して売却する、建物の所有者と協力し土地と建物をセットで売る、の3択です。
ただし、自分の土地と他人の建物の契約関係がどうなっているのか、建物の所有者と連絡が付くかどうかなどによって、取るべき対応は変わってきます。
本記事では、自分の土地に他人の建物がある場合の売却方法や、発生しがちなトラブル事例とその対処法、売却時の注意点を押さえましょう。
自分の土地に他人の建物があるってどんな状態?
●パターン①借地権付き建物がある
借地権とは、ある土地に建物を建てる権利のことです。
マンションのオーナーが持っている部屋を賃貸として貸し出すように、土地の所有権を保持しつつ、第三者に家を建てて住む権利を有料で貸すと、自分の土地に他人の家があるという状態になります。
借地権には、最初から貸し出し期間が決まっており、原則として更新できない定期借地権と、両者の合意があれば更新できる普通借地権があり、どちらの契約を結んでいるかによっても、売却の難易度が変わるため、注意が必要です。
●パターン②使用貸借の建物がある
自分の土地に他人の建物があるパターンの中でも、トラブルになりやすいのが、使用貸借の建物があるケース。
「有料で土地を貸す契約」である借地権と違って、使用貸借は「無料で土地を貸す契約」のことを指します。
たとえば、親が持つ土地の敷地内に子どもが家を建てる、近所に住んでいる知り合いに土地の一部を無料で貸すといったパターンです。
親しい相手に土地を貸している関係上、契約書を交わしていないことも多いため、「建物を取り壊して欲しい」「土地を返してもらって自分で使いたい」「管理できないため売りたい」と土地の所有者が主張したとき、揉めやすいという問題を抱えています。
●パターン③建物はすでにないが名義だけ残っている
非常に珍しいですが、自分の土地に過去あった建物の名義だけが残っているというケースもゼロではありません。
不動産の権利は、法務局という機関の登記簿で管理されており、登記簿が更新されるのは、権利者が登記の変更手続きをした時です。
自分の土地にあった他人の建物が取り壊されても、建物滅失登記という手続きをするまでは登記が残ってしまうため、「建物はもう存在しないが名義はある」という状態になることがあります。
この場合、建物の所有者を探した上で建物滅失登記を行い、登記を整理すれば、土地を売却可能です。
自分の土地に他人の建物があるときの売却方法
●仲介業者経由で底地の買い主を探す
自分の土地に他人の建物がある場合、底地だけなら建物所有者の許諾なしで売却できます。
なぜなら、不動産の権利には所有権と使用権があり、使用権として第三者に土地を貸していても、所有権である底地の売却は可能だからです。
ただし、一般的に、「購入しても誰かわからない相手が家を建てて住んでいる土地」は、不動産市場で人気がありません。
底地として売却するなら、売却価格が低くなることを覚悟しておく必要があります。
●買取業者に売却する
自分の土地に他人の土地がある状態で、土地を売却するもう一つの方法が、買取業者の利用です。
不動産の買取業者は、建物所有者への立ち退き交渉や、使用貸借を借地権に切り替える交渉のノウハウなどを持っており、買い取った土地を再開発する技術・資金も備えているため、底地だけでも買い取ってもらえる可能性があります。
ただし、買取価格は、市場価格よりも安くなるケースが多いです。
その分、短期間で不動産を現金化できるので、売却を急いでいる場合や、権利関係が複雑で自分では対処が難しい場合に、買取査定を受けると良いでしょう。
●建物の名義を買い取り、一つの不動産として売却する
自分の土地に他人の建物がある時、最も売却価格を高額にできるのが、建物を買い取ってから売却するという方法です。
建物を買い取り、土地・建物の名義人を統一すれば、借地権や使用貸借に関するトラブルのリスクがゼロになるため、不動産の売りやすさは一気に上がります。
買い取り費用や立ち退き料はかかるものの、売りたい不動産から「訳あり物件」のイメージを外せるのが、大きなメリットです。
●建物の所有者に土地の売却を持ちかける
経済的な問題で、建物を買い取る余裕がない場合、土地の所有権を建物の所有者に買い取ってくれないか交渉するという手もあります。
借地権付き建物は、古くなった家を建て替えたり、家を売却したりする時、土地所有者の許可を取る必要があるだけでなく、礼金まで支払うのが一般的です。
こういったお金や、許諾を取る手間を面倒に感じている物件所有者は少なくないため、交渉次第では土地を相場で売却できます。
価格などの条件さえ折り合いが付けば、比較的短期間で土地を現金化できる方法です。
●建物の名義人と協力して土地・建物をセットで売却する
お互いに相手の土地や家を買い取る余力はないものの、どちらも土地や家を手放したいと考えている場合、土地の所有者と建物の所有者が同時に不動産を売るという方法もあります。
市場の買い主からすると、土地だけ・建物だけ売られている不動産は扱いづらいものですが、土地・建物がセットで手に入るなら、問題ないと考えるケースは少なくありません。
自分の土地に他人の建物がある状態でも、比較的良い条件で売却できるので、高額売却を目指すなら、建物の所有者に話を持ちかけてみると良いでしょう。
自分の土地にある他人の建物は取り壊せる?
自分の土地に建っていても、すでに人が住んでいなくても、建物自体が他人名義の資産である場合、土地の所有者は勝手に家を取り壊せません。
もし、建物所有者の同意を得ずに家を解体した場合、器物損壊罪を問われ、損害賠償請求もされてしまいます。
ただし、建物の所有者が解体に同意している場合や、借地契約の満了後、建物所有者が原状復帰(建物を解体して返却すること)を拒否しており、裁判所に訴えて解体工事の許可を得ている場合は、自分の土地にある他人の家でも解体が可能です。
自分の土地に他人の建物があるときのトラブル事例と対処法
●建物の所有者と連絡が付かない
自分の土地に他人の建物があるものの、現在誰も住んでおらず誰に連絡すれば良いのかわからない場合、登記簿を確認して現所有者を確定させましょう。
不動産の登記簿には、名義人の氏名や住所が記録されています。
もし、所有者が変わっていなければ、登記簿上の権利者に手紙などで問い合わせることで、売却に関する相談が可能です。
また、転居や相続などによって、登記簿上の所有者とコンタクトを取れない場合、裁判所経由で「公示送達」を行うという手もあります。
公示送達は、裁判所の掲示板に法的な要求を2週間掲示してもらえば、連絡先がわからない相手であっても、連絡したという扱いになる手続きのことです。
公示送達を行っても返答等がない場合、建物の明け渡しや立ち退きの請求ができるようになります。
●建物の所有者と連絡できるが売却や解体の同意を得られない
建物の所有者と連絡はできるものの、土地と建物を一緒に売ったり、土地または建物の売買で名義を統一したり、誰も住んでいない建物を解体するための同意を得られなかったりする場合に必要なのは、相手方との交渉です。
ここで重要なのが、当事者同士で交渉するのではなく、弁護士に仲裁をお願いすること。
第三者を挟むことによって、感情的になりづらくなります。
建物を手放してもらう代わりに退去費用を負担するなど、相手に合わせた提案や交渉ができるのも、プロに相談するメリットです。
●タダで貸していた土地を自分のものだと主張されてしまった
使用貸借でありがちなのが、善意からタダで土地を貸していたのにも関わらず、借主や借主の相続人が、「この土地は自分達のものだ」と主張してくるケース。
相手によっては、土地の占有で時効だといってくる場合もあります。
ただし、土地の利用料や固定資産税の相当額を受け取っていなければ、法的に強いのは土地の所有者側です。
弁護士に相談し、建物の所有者側が退去せざるを得ない状況を整えてから、建物の解体や退去を求めましょう。
相手側の状況や態度によって、適切な対応は変わります。
譲歩して無理なく立ち退けるまで時間を置く、立ち退き料を提示する、裁判をするなど、状況に合わせた対応を取ることが重要です。
土地と建物の名義人が異なる不動産を売るときの注意点
●名義をまとめるために土地や建物を無償で受け取ると贈与税がかかる
たとえ家族間であっても、名義をまとめるために、自分の土地にある他人の建物を安く譲ってもらったり、自分の土地を無償で譲ったりすると、贈与税がかかります。
良かれと思って格安または無償で不動産の名義を渡すと、かえって相手に負担をかけてしまうため、名義を統一する際は、自身の不動産を相続させるか、市場価格で売却しましょう。
●使用貸借の場合売却を考えた段階で契約書を交わす
もし、売却を考えている土地に使用貸借の建物がある場合、できるだけ早く使用貸借または借地権の契約書を交わしましょう。
土地を貸したときに契約書を作っていなくても、土地の利用に関する契約書は途中から作れます。
土地の貸し出し期限や立ち退きの条件を定めておけば、建物の所有者が立ち退きを拒否しても、契約書に従って立ち退き要求などができるため、トラブルになった時に対処しやすいです。
まとめ
自分の土地に他人の建物がある場合、土地の売却が難しくなり、建物の取り壊しもできません。
しかし、建物の所有者と交渉して家を買い取ったり、退去してもらったり、協力して土地と建物をセットで売却したりすれば、「土地と建物の権利者が異なる」という売りづらさを解消できます。
建物所有者とのトラブルを避け、スムーズに売却手続きを進められるように、自分の土地に他人の建物がある時は、不動産会社や弁護士と相談して適切な対応を見極めましょう。