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任意売却はどうやるの?手続きの流れや注意点を解説

2024.03.01

任意売却はどうやるの?手続きの流れや注意点を解説

任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になった時、金融機関の同意を得て不動産を売却し、残債を減らす手続きのことです。

ただし、本来、ローンが残っていると、不動産は売却できません。
通常は認められない家の売却を、特例で認めてもらう手続きなので、任意売却をする際は、金融機関や不動産業者との協力が必要不可欠です。

今回は、任意売却の基本から手続きの流れ、手続きする際の注意点など、任意売却に必要な知識をお伝えしていきます。

任意売却とは?競売との違いも解説

●任意売却とは

任意売却は、住宅ローンを返済できなくなった時、金融機関の同意を得て不動産を売却する手続きです。
通常、住宅ローンを返済できなくなった場合、家は差し押さえられ、競売にかけられます。

しかし、競売が始まるまで1年以上の時間がかかり、なおかつ競売の落札価格も市場価格より圧倒的に安いため、家の所有者も金融機関も競売を選ぶメリットがありません。
そこで、「家を売っても返済し切れない残債は、引き続き契約者が返済する」という条件で、本来なら売却できない不動産の売却を特別に許可してもらえるのが、任意売却なのです。

●競売との違い

任意売却と競売の違いは、大きく分けると、不動産の売却価格と売却期間。
任意売却は、不動産を一般的な物件と同じように売り出すため、市場価格で売却できる可能性が高く、スムーズに進めば数ヶ月で手続きが終わります。
金融機関との交渉次第では、売却代金の一部を引っ越し費用等に回せるのもポイントです。

一方、競売は、借金を返さない相手から担保物権を取り上げ、裁判所経由で強制的に売却し、その代金を回収する手続きとなっています。
元所有者が居座るなどのリスクがある関係上、落札価格は市場価格の50~70%程度が相場ですし、競売の開始まで1年以上かかるケースも珍しくありません。
落札代金は全額金融機関に回収され、引っ越し費用も自己負担です。
競売になると家を手放すことも公表されるため、「ローンを払えずに家を競売にかけられた」と周囲に知られてしまうという、精神的な負担もかかります。

●任意売却の利用条件

任意売却の利用条件は、以下の通りです。

・住宅ローンの返済が難しく、滞納をしている
・金融機関から任意売却の許可を得ている
・共有名義人や連帯保証人の同意がある

原則として、住宅ローン返済で困っている方向けの制度なので、収入や家計に問題がなく、返済を続けられる方や家を売ればローンを完済できる方は、任意売却を選択できません。

ただ、誰にも連絡せずにローンを滞納すると、金融機関は督促を始めますし、連帯保証人の元には一括返済の通知が届きます。
関係者の協力がないと、任意売却が成功する前に家を差し押さえられたり、連帯保証人と不仲になったりするリスクがあるため、任意売却する場合は、事前の相談が必須です。

任意売却の流れと必要な手続き

●任意売却の全体的な流れ

任意売却は、大まかに以下のような流れで進めていきます。

・金融機関に相談する
・不動産業者の査定を受ける
・ローン残高を確認し金融機関から任意売却の許可を取る
・住宅ローンを滞納し「期限の利益の喪失通知」を受け取る
・不動産の売却手続きを始め買い主を見つける
・決済・引き渡し・登記をすませる
・任意売却後の残債を返済する

●金融機関へ相談する

任意売却を行う時は、滞納する前に住宅ローンを組んだ金融機関に相談しましょう。
滞納後の相談だと、相手側の心象が悪くなりますし、競売に向けた手続きが始まってしまうため、任意売却の準備時間を十分に確保できません。
しかし、事前に相談しておけば、ローンの借り換えによる金利の圧縮や返済期間の延長など、任意売却以外の方法も検討できますし、任意売却の期間も長く取れます。

●不動産業者の査定を受ける

金融機関と相談をしつつ、不動産業者に物件の査定を依頼しましょう。
専門家に不動産の市場価値を見てもらうことで、住宅をいくらで売れるのか、ローンの完済にいくら不足しているのかを把握できます。
もし、売却代金でローンを完済できるなら、任意売却をする必要はありません。
なお、複数の業者から査定を受けることで、より適正な価格で不動産を売り出せるようになります。

●ローン残高を確認し金融機関から任意売却の許可を取る

任意売却の代金で返済しきれなかった残債は、引き続き契約者が返済することになるため、正確なローン残高のチェックも必須です。
不動産の査定結果が揃ったら、金融機関に問い合わせてローン残高を確かめ、任意売却の許可を申請しましょう。
この時、任意売却のスケジュールや、残債の返済方法なども決めていきます。
並行して共有名義人や連帯保証人に連絡を取り、売却の同意を得ておきましょう。

●住宅ローンを滞納し「期限の利益の喪失通知」を受け取る

任意売却の準備が終わったら、住宅ローンを滞納します。
なぜなら、任意売却の正式な申請ができるのは、金融機関が「返済をもう待てない」「連帯保証人に一括返済の請求をする」と決めた後だからです。
多くの金融機関では、半年ほど滞納すると「期限の利益の喪失通知」が送られてきます。
通知を受け取ってから、任意売却の申請を行いましょう。

ただし、フラット35など、一部のローンでは2~3ヵ月の滞納時点で任意売却を申請できる場合もあります。

●不動産の売却手続きを始め買い主を見つける

金融機関から任意売却の許可を得た後は、不動産売却の開始です。
事前に相談・契約していた不動産業者に仲介してもらい、物件広告を用意したり内覧対応を行ったりして、買い主を募りましょう。

なお、任意売却の申請をしていても、競売手続きは止まりません。
滞納から約1年後の「競売開始」が任意売却のタイムリミットなので、スピード感を持って売却を進める必要があります。

●決済・引き渡し・登記をすませる

買い主が見つかり、売買契約を交わしたら、後は決済や物件の引き渡しをするだけです。
売買契約書で決めた引き渡し日に、物件の決済・引き渡し・所有権の移転登記を行います。

また、決済と同時に家を明け渡すため、買い主が決まったら、速やかに掃除や引っ越しをすませましょう。
手続きに不備がなければ、受け取った不動産の売却代金を住宅ローンの返済に回し、任意売却は完了です。

●任意売却後の残債を返済する

任意売却を行った後は、売却代金で返済し切れなかった住宅ローンの残債を、引き続き返済することになります。

ただ、債権者にとっても最も重要なのは、貸したお金を回収することです。
厳しい取り立てをした結果、自己破産等になると融資資金を回収できないので、任意売却後の残債は、分割払いや一部免除などを認めてもらえる場合が少なくありません。
競売だと、残債の一括返済を求められますが、任意売却なら条件交渉ができるので、無理のない返済計画を立てましょう。

任意売却のメリットとデメリット

●任意売却の主なメリット

任意売却を選ぶ最大のメリットは、競売よりも不動産を高く売れる可能性があることです。
競売の落札価格は、不動産を市場で売ったときの50~70%、任意売却であれば不動産をできるだけ高く売り、売却後に残るローンを減らせます。

また、金融機関と条件面の交渉ができることもポイントです。
競売なら売却代金を全額返済資金として回収されますが、任意売却だと売却時の経費や引っ越し代を売却代金から出したり、売却の時期を調整したりできます。
手続き自体は通常の売却と同じなので、知り合いや親族に、ローンの返済で苦しんでいると知られる心配もありません。

●任意売却のデメリット

任意売却には金融機関や連帯保証人の同意が必要ですし、時間制限も存在します。
一律で任意売却を拒否している金融機関もありますし、段取りが悪いと期限までに不動産を売却できず、競売になってしまうため、任意売却を成功させるための事前準備が必要不可欠です。

また、任意売却は、仕組み上一度ローンを滞納するため、信用情報に事故情報が残ります。
事故情報がある間は、ローンの利用やクレジットカードの作成が難しくなるため、注意が必要です。

任意売却を成功させるための注意点

●税の滞納等がある場合必要な対応が変わってくる

住宅ローンの返済で苦しんでいる方は、固定資産税や住民税、社会保険料の支払いなどを滞納しているケースが少なくありません。
ここで重要なのが、すでに差し押さえられている不動産は、売却できないということです。

もし、持ち家を税の滞納で行政に差し押さえられている場合、滞納している税金と延滞税を納めて、差し押さえを解除してもらう必要があります。
行政の差し押さえは非常に厳しいため、お願いして差し押さえを解除してもらうといった対応は期待できません。
税を滞納する前であれば、分割納付等を提案してもらえる場合もあるため、早目に市区町村の窓口へ相談に行きましょう。

●任意売却の取り扱いに慣れた不動産業者の力を借りる

任意売却は、手続きの性質上、売却にかけられる時間が有限です。
時間をかけても良いから不動産を高く売るという売却戦略は取れないので、不動産を売る時は、任意売却に扱いに慣れた不動産業者や、営業力のある不動産業者と契約する必要があります。

ただ、一社の査定で不動産業者の良し悪しを見極めるのは、困難です。
複数の業者に査定を頼み、任意売却の検討をしていると正直に伝えて、最も誠実に対応してくれる不動産業者を頼りましょう。

まとめ

任意売却は、住宅ローンの返済が困難になった時、金融機関の同意を得て不動産を売却する手続きです。

競売よりも高値で不動産を売却でき、売り主のプライバシーも守られるというメリットがある一方、金融機関や連帯保証人の同意が必須ですし、タイムリミットも存在します。
より良い条件で売却を成立させ、返済負担を抑えるためには、できるだけ早く金融機関や不動産業者と相談し、段取り良く売却手続きを進めることが重要です。

ローンの返済が苦しくなってきたら、一人で悩みを抱え込まず、専門家の力を借りて問題解決を目指しましょう。

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