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抵当権とは?抵当権付き不動産の売却方法や注意点を紹介

2024-03-01

抵当権とは?抵当権付き不動産の売却方法や注意点を紹介

抵当権とは、ローンを組む時に、金融機関が不動産を担保にする権利のことです。
抵当権があれば、万が一契約者がローンを滞納しても、金融機関は家や土地を差し押さえて売却し、貸し付けたお金を回収できるので、不動産をローンで買うと必ず抵当権が設定されます。

そのため、不動産を売る時は、抵当権を消してから物件を引き渡すのが一般的です。

本記事では、抵当権の仕組みから、抵当権付き不動産の売却方法、売却時にかかる費用や注意点まで、解説します。

抵当権とは?抵当権付き不動産の売却が難しい理由

抵当権とは

抵当権は、何らかのローンを組んだ方が返済を滞納した時に、金融機関が貸し付けたお金を回収するための仕組みです。
具体的には、ローンの滞納が発生すると、銀行などの金融機関は、「抵当権」を行使して担保物件を差し押さえられるようになります。

抵当権のイメージ

金融機関
(銀行など)
お金を貸す
抵当権を設定
(万が一の時は回収)
返済
契約者
(家の購入者)

差し押さえられた家は、家庭裁判所を通じて競売にかけられるので、万が一、お金を返せない契約者がいても、金融機関は最低限のお金を回収できるのです。

抵当権と根抵当権の違い

抵当権と似ている用語に、根抵当権というものがあります。
根抵当権とは、「担保の上限額まで、繰り返しお金を借りられる抵当権」のことです。

通常、担保とローンは1対1なので、4,000万円相当の価値を持つマイホームを担保にして、3,000万円の住宅ローンを組んだ場合、ローンを完済するまで追加でお金は借りられません。
しかし、根抵当権だと、上限の4,000万円まで、何度でも好きに借りて好きに返済できるのです。

抵当権(一般的)
  • 1対1の関係
    特定のローンに対して設定される
  • 完済すれば消せる
    手続きを行えば抹消可能
  • 住宅ローンで利用
根抵当権
  • 極度額(上限)を設定
    上限まで繰り返し借り入れ可能
  • 完済だけでは消えない
    当事者間の合意による解除が必要
  • 事業用資金などで利用

また、抵当権はローンを完済すれば消せますが、根抵当権は、ローンを完済しただけでは解除できず、「当事者間の合意」も必要になります。
不動産の売買で使われるローンは、抵当権が一般的です。
ただ、親から相続した収益物件や自営業の店舗だと、根抵当権が設定されているケースもあります。

抵当権と根抵当権で、扱いの難しさが大きく変わるため、ローンを組んだり不動産を手に入れたりする時は、抵当権の種類を確かめましょう。

抵当権付き不動産の売却が難しい理由

抵当権の付いた不動産の売却が難しいとされる理由は、引き渡し時に抵当権が残っていると、差し押さえのリスクがあるからです。
抵当権を消せるのは、ローンの完済後。
たとえ売買で所有者が変わっても、抵当権は消えません。

! 抵当権が残っている場合のリスク

抵当権が残っている限り、元の持ち主がローンを滞納すれば、家を差し押さえてしまうので、不動産は抵当権付きのままだと売れないのです。
不動産を売る時は、引き渡しまでに抵当権を解除する必要があります。

抵当権付き不動産の売却方法と各方法のメリット・デメリット

手持ち資金で住宅ローンを完済してから売る

抵当権付き不動産が売れない理由は、抵当権があるからです。
そのため、自己資金で住宅ローンを完済し、抵当権を外せば、ただの中古住宅として売却できます。

また、あらかじめローンを完済している場合、「最低でもローン残債以上の金額で売らないと損をする」といった制限がなく、売却代金のほとんどを手元に残せるため、買い主との価格交渉もスムーズです。
ただし、資金力が求められるため、誰でも使える方法ではありません。

メリット

  • ただの中古住宅として売却しやすい
  • 価格交渉がスムーズに進められる
  • 売却活動の自由度が高い

デメリット

  • まとまった自己資金(完済資金)が必要
  • 利用できる人が限られる

売却代金でローンを完済する同時決済

抵当権付き不動産の一般的な売却方法は、売却代金でローンを完済し、抵当権を消す同時決済です。
売却代金の受け取り、金融機関への返済、抵当権の抹消手続きを同日に行えば、抵当権がない状態で不動産を引き渡せます。

ただし、一日で複数の手続きを進める必要がある以上、金融機関や司法書士との連携が必要です。
段取りが悪いと売買そのものに支障をきたすので、同時決済をする際は、丁寧に準備を進めましょう。

メリット

  • 自己資金が少なくても売却可能
  • 一般的な方法で手続きのモデルが確立されている

デメリット

  • 関係者(銀行・司法書士等)との緻密な連携が必須
  • 決済当日にミスが許されない

住み替えローンを使った売却

住み替えローンは、住み替え時に住宅ローン残債と新居の購入代金をまとめて借りられるローンです。
住み替えローンを利用できれば、不動産の売却代金だけでローンを完済できない状況でも、古い家を売って新しい家に住み替えられます。

とはいえ、通常のローンよりも高額なローンを組むことになるので、ローン審査は厳しいです。
借り過ぎれば滞納のリスクも高まるため、無理なく返済していける住み替えプランを立てましょう。

メリット

  • 売却代金で完済できなくても住み替えができる
  • 資金計画を一元化できる

デメリット

  • 借入額が大きくなるため審査が厳しい
  • 毎月の返済負担が増える可能性がある

住宅ローン返済が困難な場合は任意売却

家を売っても住宅ローンを完済できない、なおかつ手持ち資金も足りない場合、金融機関の同意を得て、本来なら売れない不動産の売却を認めてもらう手続き、任意売却を利用できます。
ただ、お金を借りた銀行の同意が必須、信用情報に事故情報が残るため、数年間は新しくクレジットカードを作ったりローンを組んだりできない、返済しきれない残債は引き続き返していくことになるなど、デメリットも多い手段です。

安易におすすめできる売却方法ではありませんし、準備も必要なので、ローンを滞納する前に金融機関や不動産業者に相談し、任意売却すべきかどうかを考えましょう。

抵当権抹消手続きの流れと費用

抵当権抹消登記とは

抵当権抹消登記とは、不動産の抵当権を外す手続きです。
抵当権は、不動産の所有権等を管理している「登記簿」上に設定されており、所有権や抵当権といった登記の中身は、第三者が悪用できないよう、権利者が手続きをしたときのみ変更できるようになっています。

ローンを完済しても、自動的に抵当権は消えないため、抵当権付き不動産の売却時は、ローンを完済して完済の証明書を金融機関から受け取り、法務局で抵当権抹消登記を申請する必要があるのです。

抵当権抹消手続きの流れ

抵当権を抹消する手続きは、以下のステップで進めます。

1
ローンを完済する
2
必要書類の受け取り
金融機関からローンの完済証明書や委任状等が送られてきます。
3
抵当権抹消登記の申請
申請書と必要書類を法務局に提出します。
4
抵当権解除
法務局による審査後、問題がなければ完了です。

必要書類を準備できていなかったり、書類に不備があったりすると、抵当権を削除できません。
同時決済をする場合はミスが許されないため、司法書士への依頼を検討しましょう。

抹消手続きにかかる登録免許税とその他費用

抵当権の抹消登記を行う場合、土地・建物一つにつき1,000円の登録免許税を納める必要があります。
土地付きの戸建てなら、手数料は2,000円です。
また、売却する不動産の、登記事項証明書等の発行手数料として、数百円かかります。

抜け・漏れがないよう、あらかじめ必要書類や手数料を一覧にしておき、スムーズに抹消手続きができるよう準備を進めましょう。

登記を司法書士に依頼するメリットと費用の相場

登記は、特別な資格がなくても個人で申請できます。
しかし、手続き自体の確実性や、準備の手間を考えると、司法書士に委任するのがおすすめです。

司法書士依頼のコストパフォーマンス

費用の相場 1〜2万円程度
メリット

同時決済時の複雑な手続き(書類受領、法務局申請まで)を全て任せられる。

なお、抵当権抹消登記の代行は、1万円から2万円程度で依頼できます。
同時決済だと、買い主からお金を受け取った後、金融機関から抵当権抹消登記の必要書類を受け取り、法務局に出向いて登記の申請をするところまでやってもらえるので、司法書士に依頼するコストパフォーマンスは高いといえます。

抵当権付き不動産を売る時のポイントと注意点

専門家への相談はできるだけ早く行うことが大切

抵当権の付いた家や土地を売る時は、ローンを組んだ金融機関・不動産業者といった専門家へ、なるべく早く相談しましょう。
なぜなら、金融機関に抵当権抹消登記の必要書類を準備してもらったり、ローンを完済できる金額で手放せる売却プランを不動産業者と練ったりするためには、ある程度時間がかかるからです。
時間の余裕があれば、より多くの選択肢の中から、自分達に合った手段を選べます。

抵当権の有無にかかわらず売却時に税金がかかる場合がある

不動産を売って利益が出た場合、抵当権の有無に関わらず、譲渡所得税や住民税といった税の納税が必要です。
また、これらの税金は、不動産を売った時ではなく、不動産を売った翌年の確定申告期間(2月16日~3月15日)に納めます。

注意:資金計画

税金のことを考えずに売却代金を使い切ってしまうと、適切な納税ができなくなるため、不動産売却で利益が出そうな時は、「税金も含めた資金計画」を立てましょう。

抵当権や返済義務も相続の対象

もし、ローン返済中の不動産を相続することになった場合、家や土地だけでなく、抵当権やローンの返済義務も引き継ぐことになります。
相続のルール上、「ローンの残っている不動産だけ手放して、預貯金や他の資産は受け継ぐ」といった対応は取れません。

相続放棄ができるのは、相続が発生したことを知ってから3ヵ月、相続税の申告と納税の期限は、相続の発生から10ヵ月以内です。
想像以上に時間がないため、家を相続してもローンを返す余裕がない場合は、早目に相続放棄や限定承認の検討を行い、手続きする必要があります。

売却・抵当権抹消登記・所有権移転登記は同時に行う

買い主から、「早めに入居してリフォームを始めたいから、お金を払う前に所有権を移して欲しい」といった要求をされても、断りましょう。
なぜなら、代金の受け取り・ローンの完済・抵当権抹消登記・所有権移転登記のタイミングがずれると、不動産をだまし取られるリスクがあるからです。

不動産売買の詐欺や被害は、現代でも起きています。
慎重過ぎると感じるくらい慎重に手続きを進めて、トラブルを回避しましょう。

まとめ

抵当権とは、ローンで不動産を買う時に設定される、差し押さえの権利です。
抵当権の解除は、ローンを完済した時のみ可能で、抵当権付き不動産を売る場合、抵当権を消してから物件を引き渡す必要があります。

ただ、抵当権付き不動産の売却は、「手持ち資金で完済」「売却代金を使った同時決済」「住み替えローン」「任意売却」といった複数の方法があり、自身に合った売却方法を見極めることが重要です。

売却準備が遅れると、より良い売却方法を選ぶ余裕がなくなるため、抵当権付き不動産を売る時は、できるだけ早く専門家に相談しましょう。