
固定資産税を滞納するとどうなる?差し押さえまでの流れを解説
2018.01.09
固定資産税を滞納した先に待っているのは、財産の差し押さえです。
税金の滞納に対する役所の行動は、借金の取り立て以上に厳しく、容赦がありません。
滞納をすると延滞金もかかります。
ただし、固定資産税を滞納してから差し押さえられるまでの流れを知っておけば、手遅れになる前に対処可能です。
今回は、不動産を所有する方であれば誰もが関わりのある、固定資産税の基本情報や、固定資産税を滞納した場合の影響、差し押さえまでの流れ、滞納を防ぐためにできることなどを解説します。
固定資産税とは
固定資産税とは、土地・建物といった不動産や、工場の機械などの固定資産に対して課税される税金のことです。
資産としての評価額によって納税額が決まり、不動産を持っている限り、毎年納税する必要があります。
道路や公園がきれいに整備されていたり、学校などの教育機関が運営されていたり、介護・福祉サービスが成り立ったりしているのは、納めた固定資産税が地方自治体の財源として活用されているからなのです。
固定資産税の税率と納付方法
固定資産税の税率は原則1.4%、納付額は、「固定資産税評価額×1.4%」で計算します。
自治体が固定資産税評価額を調べて計算してくれるため、自分で納付額を計算する必要はありません。
一般的には、毎年4月から5月に固定資産税の納税通知書という書類が届き、通知書に同封されている納付書を使って納税を行います。
固定資産税の納付は、1年分を1~4期に分割した4回払い。
口座振替や、クレジットカード払いも可能です。
口座振替等の手続きをしていない場合は、最寄りの金融機関やコンビニに納付書を持ち込んで納付します。
1期ごとに納付期限があり、期限までに納税しないと滞納になってしまうため、注意が必要です。
固定資産税を滞納するとどうなる?
●1日ごとに延滞金が発生する
固定資産税を滞納すると、延滞金が発生します。
延滞金は2段階式になっており、納付期限の翌日から1ヵ月以内は最大7.3%、1ヵ月以降は最大14.6%の納付が必要です。
1日ごとに延滞金が上乗せされていくため、30日滞納すれば30日分、31日滞納すれば31日分の延滞金を支払うことになります。
なお、延滞金は、以下の式で計算可能です。
・滞納税額×延滞金割合×日数÷365
延滞金の割合は年率なので、365で割ります。
また、延滞金の割合は、年度によって異なるため、年度ごとの計算が必要です。
例えば、2年滞納している場合、1年目と2年目の延滞金を個別に計算してから合計します。
●督促状が届く
固定資産税を滞納した場合、最初に届くのが督促状という書類です。
督促状は、「滞納をしていますよ」という通知であり、「この条件で改めて納付してください」という納付期限や延滞金が記されています。
届いた督促状の内容に従って、固定資産税と延滞金の納付を行えば、それ以上の対応には進みません。
基本的に、督促状が届いた段階で対処しましょう。
●督促状を無視すると電話や自宅訪問で督促される
督促状を無視すると、自治体の担当者が電話してきたり、自宅を訪問してきたりします。
目的はもちろん、滞納している固定資産税の納付を促すためです。
法的にいうと、督促状を送ってから10日経てば、自治体は財産を差し押さえられるのですが、ほとんどの場合、いきなり差し押さえの手続きへ進む前に督促してくれます。
ここからさらに滞納を続けると、自治体が法的手続きを取ることになるため、注意が必要です。
●不動産を差し押さえられる
固定資産税の滞納後、最終的には差し押さえが待っています。
通常、借金の滞納による差し押さえは、裁判所に申し立てを行い、差し押さえ命令が出てから行われますが、自治体は裁判所の命令なしで延滞税の差し押さえが可能です。
そのため、事前に「差押予告通知書」が送られてくることもあれば、ある日、突然家に担当者がやってくる場合もあります。
家や土地はもちろん、車、銀行口座の現金なども差し押さえの対象です。
差し押さえられた財産は、自分のものではなくなるため、家を差し押さえられれば住まいを失ってしまいます。
また、差し押さえられた財産や不動産は、競売にかけられ、不動産などの売却代金が滞納の解消に使われるため、最低限の生活に必要な財産以外は、手元に残りません。
固定資産税の滞納から差し押さえまでの流れ
固定資産税を滞納してから差し押さえられるまでの流れは、以下の通りです。
・滞納
・督促状の送付
・電話や自宅訪問による督促
・差し押さえ
・競売
一般的には、滞納後20日以内に督促状が届き、その後督促状の納付期限内に対応しないと、身辺調査や自宅訪問などが行われます。
財産調査や身辺調査が終われば、差し押さえ手続きの開始です。
どの程度の日数で手続きが進むかは、自治体や滞納の悪質さなどによって変わりますが、滞納から1ヵ月経てば、いつ差し押さえられてもおかしくありません。
固定資産税の滞納後に差し押さえられる財産は?
固定資産衛税の滞納後、以下のような財産が差し押さえの対象となります。
・預貯金
・給与
・自動車・バイク・貴金属等の高価な財産
・不動産
差し押さえが行われる場合、役所はどの銀行に口座を持っているのか、どこに勤めており、どういった財産を所有しているのかといった情報を全て調査済みです。
必要最低限、生活を維持するために必要な財産やお金は免除されますが、それ以外は差し押さえられます。
会社勤めの場合、税の滞納を会社にも知られることになるため、差し押さえは経済的なダメージだけでなく、社会的・精神的なショックも大きい出来事です。
また、税を滞納していると、そのほかのローン審査にも影響が出てしまいます。
カーローンや住宅ローンの審査も落ちやすくなるので、差し押さえられる前に固定資産税の滞納を解消しましょう。
固定資産税の滞納を防ぐためにできること
●納付書が届いたときに一括で納付する
固定資産税の滞納を防ぐために効果的なのが、納付書が届いた段階で、1年分を納付してしまうことです。
固定資産税は年4回の分割払いなので、1期ごとに払おうと考えていると、忙しくしている間に2期だけ滞納してしまうといった事態が起こる場合もあります。
1年分を全納してしまえば、少なくとも1年間は固定資産税を滞納する心配がありません。
●口座振替やクレジットカード払いを利用する
納付書を紛失してしまう、払おうと思っている内に忘れてしまう場合、口座振替やクレジットカード払いを利用するのがおすすめです。
口座振替、またはクレジットカード払いの申請をしておけば、自動的に税金が引き落とされるため、滞納のリスクがなくなります。
たとえば、税金や公共料金などの支払い専用の口座やカードを用意すると、家計の管理も楽になるでしょう。
●滞納する前に最寄りの自治体へ相談する
滞納がうっかりであれ、経済的な理由であれ、最も大切なのは、滞納をする前に最寄りの自治体へ相談することです。
役所は、滞納の督促を無視すればするほど対応が厳しくなります。
滞納をしていても、固定資産税を支払う意思を見せれば、事情に応じて分割払いを提案してくれたり、納付を猶予してくれたりするため、「固定資産税を払えない」と思った段階で役所に助けを求めましょう。
●不動産を手放す
誰も住んでいない実家や田舎の土地など、使う予定のない固定資産税を納めているなら、不動産を手放すのも手です。
不動産を売却すれば、それ以降固定資産税を納める必要はありません。
ある程度、高く売れたら、売却代金を生活費や投資、別の不動産を買うときの頭金等にも使えるので、持て余している不動産は売却を検討しましょう。
●不動産を担保にしてお金を借りる
固定資産税の支払い資金を作るために、不動産を担保にしてお金を借りる方法もあります。
返済を滞納してしまうと、家を差し押さえられるというデメリットはあるものの、まとまった金額を借りられれば、経済的に苦しい状況から脱出できるでしょう。
ただし、ローン審査では、固定資産税等の納付状況もチェックされます。
滞納してから不動産を担保にしようとしても、審査に通らない可能性が高いため、滞納する前に融資を受けるのがおすすめです。
●生活保護の申請をする
会社が倒産した、病気で働けなくなったなど、経済的な困窮から固定資産税の納付が難しくなった場合、生活保護の申請も視野に入れましょう。
生活保護の受給者は、固定資産税の減免を受けられる場合があります。
固定資産税の一部、または全額を減免してもらえたら、金銭面の心配をする必要はありません。
とはいえ、生活保護の審査は厳しいので、役所の窓口や福祉事務所のケースワーカーに相談して、適切な支援を受けましょう。
固定資産税の滞納に関するQ&A
Q.納付書を失くしたらどうすれば良い?
A.役所に連絡すれば、納付書を再発行してもらえます。
ただし、納付期限は変わりません。
期限内に納税できるよう、早目に再発行しましょう。
Q.自己破産すれば滞納分を免除してもらえる?
A.自己破産をしても、固定資産税の滞納分は免除されません。
いわゆる借金は自己破産で免除されますが、非免責債権と呼ばれる税金や社会保険料、罰金等は、自己破産しても支払い義務が残ります。
Q.督促や差し押さえから逃げる方法はある?
A.滞納税は5年で時効を迎えますが、現実的に督促や差し押さえから逃れる術はありません。
税金の取り立てや差し押さえを行うのは、自治体です。
夜逃げをしても、引っ越しを繰り返しても、住所登録をした段階で居場所は発覚します。
逃げれば逃げるほど、役所側の対応も厳しくなるため、固定資産税を含めた税の滞納はできる限り避けましょう。
まとめ
固定資産税を滞納すると、延滞金が発生し、督促が行われ、最終的に財産を差し押さえられます。
差し押さえまで進むと、生きていくために必要最低限の資産しか手元に残せません。
幸い、自治体は税金を納める意思を見せれば、手助けしてくれます。
一括納付や口座振替の利用で支払い忘れを防ぎつつ、滞納しそうなとき、滞納してしまったときは役所の窓口へ足を運び、どうすれば良いのか相談しましょう。