column 419.

対面せずに不動産を売買できる!?IT重説のメリット・デメリット

2020.10.13

対面せずに不動産を売買できる!?IT重説のメリット・デメリット

従来の不動産売買手続きでは、「宅地建物取引士」という国家資格の所有者による対面での「重要事項説明」が義務付けられているため、何度も不動産業者の店舗まで足を運ぶ必要があります。
しかし、「不動産業者の店舗まで出向く時間がない」「新型コロナウイルスの影響がある内は外出を避けたい」と考える方も少なくありません。

そんな中、ひそかに注目を集めているのが、2019年から試験的に運用されている「IT重説」という取り組みです。
国土交通省がテストしている「IT重説」が全国に広まれば、非対面でネットを通じた不動産売却ができるようになります。

ただ、新しい制度を使いこなすためには、良い点も悪い点も含めた、制度に対する理解が欠かせません。
そこで今回は、IT重説の基本や、IT重説のメリット・デメリットを解説します。

IT重説とは

●ネットを使って重要事項説明を受けられる仕組みのこと

IT重説とは、「IT技術を使って重要事項説明を受けられる仕組み」です。
日本の法律では、不動産取引をする際に、「宅地建物取引士」という資格者を通じて、「重要事項説明」をすることを業者に義務付けています。
重要事項説明は、不動産業者を通じて不動産売買をする際に、売り主・買い主の双方が知っておくべき重要な内容(不動産の価格・権利関係・法的な制限の有無や住まいの状態など)を伝える手続きのことです。
不動産は一般的な商品や資産と違って価格が高く、業者と一般消費者の間で知識の差も激しいため、何らかの枷がないと業者側による不当な価格の釣り上げや買いたたきを抑えられません。

不公平な不動産売買を認めると、家を買う人がいずれいなくなり、消費が冷え込んでしまいます。
そこで、知識のない人でも公平な取引ができるように、契約に関わる重要なポイントを有資格者に説明させることを法律で義務付けているのです。

ただ、重要事項の説明義務は、もともとIT技術のなかった昭和の時代に作られたもの。
高度にIT技術が発達し、買い物どころか仕事でさえリモートでできるようになった現代の実情にはそぐいません。
そこで、国が進めているIT化の一環として、不動産取引における重要事項説明をネット越しでもできるようにしたのが、「IT重説」なのです。

●2019年10月から不動産売買でも実験的に運用されている

ただし、「有資格者による口頭での説明+書面の交付」で長年成り立っていた制度を、一気にIT化しても不動産業者や消費者はついていけません。
そのため、IT重説に関しては、まず賃貸物件の契約に限って試験導入が行われ、不動産売買については2019年10月から社会実験が行われています。

なお、売買用のIT重説は、本来のスケジュールでいうと2019年10月1日から2020年9月30日で一旦社会実験を止め、本格的な運用に向けた話し合いを進める予定でした。
しかし、新型コロナウイルスの影響で外出のリスクが増えたので、売買に関するIT重説のテストは、2020年末まで延長されることが決定されています。

IT重説のメリット

●感染症のリスクがない

非対面で重要事項説明を受けられるIT重説は、自宅で契約を進められるので、第三者と会う必要がありません。
新型コロナウイルスが猛威をふるう世の中において、感染症のリスクを避けられるのは大きなメリットといって良いでしょう。

●交通費や移動時間を抑えられる

「重要事項説明を受けるため、店舗に足を運ぶ必要がない」ということは、交通費もかからず、移動時間を考慮する必要もないということです。
たとえば、気になってはいるものの少し家からアクセスが悪く、気軽に足を運べない不動産業者にも売却の仲介を頼めるようになります。

●お互いのやり取りを記録に残せる

不動産売却におけるトラブルの中で、少なくない数存在するのが、「言った」「言わない」というすれ違いによるトラブルです。
残念なことに、人間の記憶力は自分たちが思っているよりもあいまいですし、なかには契約を取るために営業トークで適当なことをいう営業マンも存在します。
しかし、交渉の初期からネット経由での対話をしておけば、音声や動画を残しておけるので、「口頭でいったかどうか」でもめる心配がありません。

IT重説のデメリット

IT重説のデメリットは、必要最低限のネット回線と通信端末が必要になること、そして残念なことに2020年9月時点では全面的にIT重説が導入されていないことです。
IT重説の社会実験は、ごく一部の不動産業者にのみ開放されているため、身近に対応業者がいない場合もあります。
ITとはいえ地元の業者に相談したい場合や、気になる不動産業者がいる場合は、IT対応の導入を待ってから相談しても良いでしょう。

まとめ

2019年10月から試験的に導入されているIT重説を利用すれば、自宅にいながら重要説明を受け、不動産売却手続きを進められるようになります。

ただし、IT重説はまだまだテスト中の制度です。
本格的な導入には時間がかかるので、家を売る予定がある場合は、評判の良い地元の不動産業者に相談したり、気になる業者がIT重説に対応するまで待ったりすることをおすすめします。

 

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